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荘内日報ニュース


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2009年(平成21年) 11月17日(火)付紙面より

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森の時間 22 ―山形大学農学部からみなさんへ―

南シュヴァルツヴァルト自然公園との交流 平  智

 ドイツの南西部に、南北に百数十キロ、東西に数十キロ弱の大きな山塊が横たわっています。ずいぶん前に酸性雨の被害が深刻であると話題になった有名なシュヴァルツヴァルト(黒い森)です。

 「黒い森」という名前から、トウヒやモミがうっそうと茂ったうす暗い森をイメージする人が多いのですが、シュヴァルツヴァルトという名前がつけられたころは、まだブナやナラの木が多い明るい森であったと考えられます。ですから、本当は、山形大学名誉教授の北村昌美先生が言うように、人がちょっと近寄りがたいほどの深い森という意味で、「暗黒の森」と呼んだ方がいいのでしょう。

 そのシュヴァルツヴァルトのほぼ南半分にあたる、面積にして約37万ヘクタールのエリアが「南シュヴァルツヴァルト自然公園」です。

 自然公園といっても、日本の自然公園(国立公園や国定公園など)とはずいぶん雰囲気が違っています。なぜなら、エリア内に農地や牧草地や住宅地、場合によっては工場用地なども含まれているからです。自然保護や環境保全の対象となるエリアのみでなく、人が利用している地域も含めて自然公園と位置づけているのです。たとえていえば、鶴岡市全体が自然公園である、というようなとらえ方だといえるでしょうか。

 ちょっと難しい話になりますが、ドイツにはこのような自然公園が全部で100ぐらいあって、総面積はドイツ国土の約4分の1にも達するそうです。また、これらの自然公園の半数近くは社団法人として運営されていて、エリア内の地方自治体や企業や個人が平等な立場で会員になっています。

 南シュヴァルツヴァルト自然公園のオフィスは、エリア内で最も標高が高いフェルトベルク(約1500メートル)にあります。木をふんだんに使ったすてきな建物で、「ハウス・デァ・ナトゥーア(自然の家)」と呼ばれています。ここには公園内の自然や動植物に関する資料も展示されており、ミニ博物館の機能も兼ね備えています。

 南シュヴァルツヴァルト自然公園では、会員からの会費のほかに、国や州やさまざまな団体から助成を得て、年間に100件近くのさまざまなプロジェクトが実施されています。観光、スポーツ、農業体験、自然環境教育、エネルギー問題、癒やしの分野のプロジェクトなど、とても多彩な内容です。

 合併によって広大になった鶴岡市の面積は約13万ヘクタール。その約7割が森林です。市内のいたるところに、山間地の集落にも海辺のまちにも、個性豊かな伝統と文化が静かに穏やかに、しかし、脈々と息づいています。もし鶴岡市全体を一つの自然公園のようにみなして、それぞれの地域の特性を大切に育んでいくようなさまざまなプロジェクトが展開できればどんなにすばらしいことでしょう。

 「森から考えるまちづくり」と「森と森との交流」を合言葉に、南シュヴァルツヴァルト自然公園と鶴岡市との交流がスタートしてもう4年以上の月日が経ちますが、このたび、2009年7月29日に正式な友好協定を締結しました。今後も相互に交流を重ねながら、お互いの歴史や文化についての理解を深め合い、それぞれの地域に特有な資源の保全や利活用の方法を学び合おうというわけです。

 言葉にするとどうしても難しくなってしまうのですが、要はお互いの森やまちを実際に見て、歩いて、感心したり、驚いたり、さまざまな体験を通して違いや共通点を発見したりしながら、今後のまちづくりに役立てましょう! ということです。末永い、市民レベルの交流のその先にきっと、私たちの目指す「森林文化都市つるおか」がゆっくりとその姿を現してくることでしょう。

(平 智、山形大学農学部教授、専門は園芸学および人間・植物関係学)

   ◇   ◇   

 鶴岡市と山形大学農学部の連携協定締結1周年記念公開シンポジウム「つるおかの森のちから―森と人をむすぶ―」が来月12日、鶴岡市の出羽庄内国際村ホールで開かれる。山大農学部の教授陣らによる講演や座談会を通じて、つるおかの森の魅力や森と人を結ぶ活動を紹介。これからの森林交流活動や森林教育環境の在り方を考える。

 時間は午後1時半から午後4時半の予定。聴講は事前申し込みが必要。定員150人。申し込みは山大農学部企画広報室=電0235(28)2911=、またはファクス=0235(28)2812=へ。

森を歩きながら/ドイツ・フライブルグ近郊、ザンクトメルゲン=自然写真家・斎藤政広撮影(1999年6月26日)
森を歩きながら/ドイツ・フライブルグ近郊、ザンクトメルゲン=自然写真家・斎藤政広撮影(1999年6月26日)


2009年(平成21年) 11月17日(火)付紙面より

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4つの「であい」必要 森村氏 庄内観光に一石

 「人間の証明」「野性の証明」「終着駅」などの作品があり、「ミステリー界の巨匠」と称される作家・森村誠一さんを招いた講演会が15日、酒田市公益研修センターホールで開かれた。

 インターネット上のホームページ(HP)「旅の発見」で旅行商品を提案している「ティー・ゲート」(本社・東京都)の企画の1つとして森村さんは、松尾芭蕉の足跡をたどる「森村誠一×奥の細道プロジェクト」を昨年9月から展開。東京を出発し今年3月には庄内地域にも立ち寄っている。森村さんによる旅の行程は、同HPで紹介しているほか、雑誌「毎日が発見」(角川エス・エス・コミュニケーションズ)に連載している「おくのほそ道新紀行」で紹介している。

 今回の講演会は、県庄内総合支庁設置40周年記念事業の一環として、同総合支庁と日本海きらきら羽越観光圏推進協議会などが企画。森村さんは「おくのほそ道新紀行」と題し、観光の在り方、学生時代に酒田を訪れた際のエピソードなどについて講演した。

 森村さんは「観光というものは受け取り手がいない限り、何もないのと同じ。迎える側と迎えられる側が存在し初めて成り立つ。観光を支えるのは旅。人々が旅をしなければ観光にはならない」と観光の基本的な考え方を述べた上で、観光地に必要なエッセンスとして▽人との出会い▽風景との出合い▽文化との出合い▽未知との出合い―の4つの「であい」を挙げた。

 そして「旅をする人は時間と体力、経済力、そして、『旅に出たい、知らない人・文化・歴史に触れてみたい』と思う気持ち『旅恋』がなければいけない」と語り、「旅恋がないと、旅に出ても十分にエンジョイすることはできない。この旅恋こそが人生の活性化に重要なもの」と話した。

 一方、酒田市出身のクラスメートがいたことを縁に学生時代に同市を訪問した際のことにも触れ、「クラスメートは中平田に住んでいた。左手に優美にそびえる鳥海山、右手に青い水が流れ込む沼があった。忘れがたい青春のひとコマとして記憶に残っている。そんな庄内の観光に一石を投じられることは感慨無量」と話した。訪れた500人余りの市民らはメモを取りながら熱心に聴講していた。

観光の在り方などについて語った森村さん
観光の在り方などについて語った森村さん


2009年(平成21年) 11月17日(火)付紙面より

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山里にほら貝の音 出羽三山神社 手向で松の勧進始まる

 出羽三山神社の「松の勧進」が15日、おひざ元の鶴岡市羽黒町手向地区で始まった。時折強い雨風が吹き付ける中、山伏たちが吹き鳴らすほら貝の音が初冬の山里に響き渡った。

 松の勧進は、大みそかから元旦にかけて羽黒山頂で行われる出羽三山神社最大の祭事「松例祭」の浄財を集める行事。100日間の修行を積み祭りで主役を務める山伏の松聖(まつひじり)2人が、小聖(こひじり)の山伏を従えて家々を回り、無病息災や家内安全のお札を配る。

 今年の松聖は「位上(いじょう)」が山本興治さん(69)=手向=、「先途(せんど)」が小関春昭さん(65)=同=の2人。9月24日から100日修行に入り、今月13日まで前半の50日間は精進料理を食べ朝夕に勤行を行うなど別火(べっか)精進を続けた。現在は羽黒山中の斎館にこもり、後半50日の修行を積んでいる。

 この日は午前8時半ごろに同神社社務所を出発。修行中でひげをたくわえた白装束の松聖2人を中心に、山伏たちがほら貝を吹き鳴らしながら宿坊街を回った。

 時折、みぞれが降る中、松聖たちは近くの不動尊や稲荷神社、羽黒山開祖の蜂子皇子が100日修行を積んだとされる小高い聖山(ひじりやま)などを回った。小聖たちは地区内の各家を回って米や浄財を集め、お札を手渡した。

 松の勧進は1週間ほどかけて羽黒地域を巡る。来月1日からは旧鶴岡市内などを回り、庄内全域で12月いっぱい続けられる。

みぞれが降る中、恒例の「松の勧進」が鶴岡市羽黒町手向地区で始まった
みぞれが降る中、恒例の「松の勧進」が鶴岡市羽黒町手向地区で始まった



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