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荘内日報ニュース


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2010年(平成22年) 2月24日(水)付紙面より

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庄内浜のあぱ 悲哀と快活と歴史と ―43―

森敦、藤沢作品にも登場

明るい会話描く

 「羽越線の異風景」とか、「旅人の旅情を誘う」などと言い表されてきた浜のあば。その快活さは文学作品でも多く描かれている。

 芥川賞作家、森敦の作品『鳥海山』の中の「初真桑」では、酒田駅からの下り列車の発車が1時間遅れるとのアナウンスがあり、そのとき車内で待つあばたちの様子を次のように描いている。

 〈車掌はいいとしをしているが、背負い商いのかあちやんに「兄(あん)さん」と呼ばれては、わるい気持ちもしないのであろう。

 「行ける、行ける。そんま(しばらく)の辛抱だて」

 「ンだかや。おらもう、とうちゃんとこさ、帰れねえんであんめえかと思うてや」

 どッとまた、笑い声が起こった。

 車掌が去ると、あばたちが弁当を食べはじめた。こんなときにと昼の分を残しているのであろう。楽しげにオカズのやりとりをして…〉

 森は、臨機応変に会話を楽しむあばたちの姿を明るく描いた。

ガンガラ部隊も

 森は鶴岡市加茂を中心に書いた長編小説『われ逝くもののごとく』でも、あばを断片的に描いている。

 〈幼い娘サキのだだ(父親)は漁の手伝いをし、アブれれば日傭(ひよう)に出る。がが(母親)は魚をブリキの缶に入れ、背負い商いをして歩く、いわゆる浜のあばだった。加茂坂は加茂と鶴岡を結ぶ大動脈だが、険しく容易でない。加茂坂トンネルは加茂からすると、長い道のりとは思えませんが、降(くだ)って大山の町に出るには、延々たる道を歩かねばなりません。湯野浜などを回る平坦な道もあるが、加茂の人々は労を厭(いと)わず、時間を費やすことを嫌い、重荷を背負(しょ)って遮二無二加茂坂を登ったのです〉

 加茂の女性たちは、港で揚がった魚を背負って加茂坂を越え、目的地まで届ける役割を担っていた。森が書いた、魚を入れたブリキ缶を背負うあばたちのことを、加茂辺りでは「ガンガラ部隊」と呼び、鶴岡市民の食卓を支えた。森は苦労と重労働をいとわないあばたちのたくましさを描いている。

記念急行券にも

 浜で捕れた魚を消費者に届けるあばは、新鮮さが自慢の産地直送(直売)の先駆けだった。まんじゅ笠をかぶり、リヤカーを引いて街を歩く姿は城下町・鶴岡の風情に似合っている。鶴岡市出身の作家、藤沢周平も短編小説『玄鳥』で、〈城下には朝のうち漁師の女房が魚を売りにくる〉と書き、『龍を見た男』の油戸の漁師の女房も、山を越えて城下まで売りに来た。

 羽越本線の旧「温海駅」は、1977(昭和52)年10月、現在の「あつみ温泉駅」に改称され、当時の新潟鉄道管理局が記念急行券を発行した。その図柄に採用されたのは、湯治場の名残りをとどめる朝市の風景。
 
 姉さんかぶりで座ったあばの前で、浴衣姿の泊まり客が品定めをしている。その様子を、温泉名物の楽焼で知られる男と女のカッパが眺めている。まるで、あばと客の会話を聞いているように。

(論説委員・粕谷昭二)

記念乗車券の図柄になった朝市。姉さんかぶりのあばが風情を演出している(左) ピースサインをして列車に乗り込む。浜のあばは、快活さにちゃめっ気もある。写真は酒田市の上嶋みよさん(余目駅で)
記念乗車券の図柄になった朝市。姉さんかぶりのあばが風情を演出している(左) ピースサインをして列車に乗り込む。浜のあばは、快活さにちゃめっ気もある。写真は酒田市の上嶋みよさん(余目駅で)


2010年(平成22年) 2月24日(水)付紙面より

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強い意志で夢に挑戦!! 鶴岡地区きらやか会 古賀さん(五輪柔道金メダリスト)熱く語る

 きらやか銀行の鶴岡地区7店舗の顧客でつくる鶴岡地区「きらやか会」(会長・中村修一ナカムラ社長)の新春講演会が22日、鶴岡市のグランドエル・サンで開かれた。バルセロナ五輪(1992年)柔道男子71キロ級金メダリストの古賀稔彦さん(42)が、「夢への挑戦が人間を成長させる」と語った。

 会員同士の親睦(しんぼく)を図ろうと毎年この時期に開いている懇談会に合わせ、初めて講演会を企画。会員約300人が出席した。

 古賀さんは「夢への実現」の演題で、バルセロナ五輪での経験を交えながら「自分の欠点を素直に認めることができる人が、長所を伸ばすことができる。欠点を埋めようと努力し、挑戦し続けることで結果が生まれ、人は成長する。夢、目標を他人から押し付けられるのではなく、自らが強い意志、やる気を持って動くこと」と語った。

 会場を埋めた聴衆は、古賀さんの熱い語りに時折大きくうなずくなど熱心に耳を傾けていた。

「自分はこれからも人生に挑戦し続けていく」と語る古賀さん
「自分はこれからも人生に挑戦し続けていく」と語る古賀さん


2010年(平成22年) 2月24日(水)付紙面より

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役に立ててうれしい 朝暘四小 アルミ缶集め車いす寄贈

 鶴岡市の朝暘第四小学校(天野卓夫校長、児童550人)の児童たちがボランティア活動で集めたアルミ缶で車いす1台を購入し22日、学区内にあるデイサービスあゆみの家(石原一惠代表)に寄贈した。

 同校では、ボランティア委員会が中心となり、全校でアルミ缶などの回収を実施。学区内の福祉施設に車いすやタオルなどを寄贈する活動を行っている。

 今回は同委員会などが中心となり、月2、3回、回収日を設けるなどして全校児童に協力を呼び掛け、昨年4―12月までにアルミ缶785キロを集めた。それを鶴岡市のリサイクル業者を通じて換金し車いすを購入した。

 この日はボランティア委員長の谷口輪君(6年)ら委員4人があゆみの家を訪れた。谷口君が「皆さんのお役に立てればすごくうれしいです。有効に使ってください」と石原代表に車いすを手渡した。石原代表は「皆さんの努力でこんな素晴らしい車いすを頂けてうれしいです。大事に使わせてもらいます」とお礼の言葉を述べた。

朝暘第四小の児童が学区内の老人福祉施設に車いすを贈った
朝暘第四小の児童が学区内の老人福祉施設に車いすを贈った



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