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荘内日報ニュース


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2010年(平成22年) 1月13日(水)付紙面より

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森の時間24 ―山形大学農学部からみなさんへ―

万葉のインディー・ジョーンズ 小山 浩正

 万葉集に「薬狩り」という言葉が出てきます。古代の貴族が山野で薬草を摘む行事のことです。かの額田王が、夫の天智天皇の眼前で元恋人の大海人皇子と恋歌を交換する際どいシーンが有名ですが、あれも薬狩りに出掛けた時の座興だったようです。昔は貴人もずいぶん山を散策したことがうかがえます。そして、現代でも形や名前こそ変わったものの、薬狩りは盛んに行われているのかもしれません。

 ブナの種子は落ちる直前まで殻斗という殻に包まれています。これはクリのイガに相当する器官です。これもやがて地面に落ちますが、かなり堅いのですぐには分解されず、しばらく地表に残ります。ブナ林の地表で落ち葉をめくれば簡単に見つかるはずです。この殻斗だけに発生するシロヒナノチャワンタケというキノコがいます。文字どおり白い糸状の上に茶碗のような傘が乗った小さなキノコです。ブナの殻斗にしか生えないとは相当な変わり者です。ブナの専門家を自称している私ですが、恥ずかしいことに最近まで全く知りませんでした。ある日、同じ農学部の塩野義人さんが私の研究室を訪れて、開口一番「シロヒナノチャワンタケを知っていますか」と尋ねられました。きょとんとしている私に右の話を教えてくれたのです。

 塩野さんの仕事は、自然界の菌類から抗がん物質など有用な物質を取り出す研究です。だから現代の薬狩り人と言ってよいでしょう。この業界で最も成功した例は西洋イチイという樹から抽出したタキソールという抗がん剤で、年間10億ドル近い経済効果があるそうです。まさにトレジャーハンター、ムチの変わりに化学を駆使するインディー・ジョーンズといったところです。そんな彼が私を訪ねたのは、どこに良いブナ林があるか分からないので、チャワンタケ探しに同行してほしいということでした。実験できないフィールドワーカーとフィールドを知らない実験家が手を組んだようなものです。

 それまで注意していませんでしたが、言われてみれば確かにチャワンタケはブナ林のあちこちにあります。目に映っていたのに見ていなかったのです。1時間ぐらいで袋いっぱい集めることができました。それから半年ほど過ぎたある日、彼が再びやって来て実験の途中経過を教えてくれました。培養したキノコからはノルコレンソイック酸という物質が見つかったとのこと。「おぉっ!これで俺たちは億万長者か!」。興奮する私をたしなめるように、ひと言「役に立つものかどうか、まだ全然分かりませんよ」。

 現代の薬狩りは、こうして一つひとつの植物を慎重に調べながら有用物質を探索していくのでしょう。以前に紹介したヤドリギからも抗がん物質が発見されています。森はそうした意味で未知なる物の宝庫です。「森はデパート」と表現した人もいます。数多(あまた)ある植物の中でどれをターゲットに調べるかが勘所ですが、それには古代人が薬狩りで培った野草の知識が役に立つかもしれません。彼らが何を集めていたか調べる価値はあります。化学で儲けたかったら、万葉集を片手に山に行くのが意外な近道だったりして。

(山形大学農学部准教授 専門はブナ林をはじめとする生態学)

発芽したてのブナの芽生え。その根元に殻斗があります。その周りをよ?く見ると、白いキノコがあるようです=自然写真家・斎藤政広撮影(1998年5月19日、鳥海山にて)
発芽したてのブナの芽生え。その根元に殻斗があります。その周りをよ?く見ると、白いキノコがあるようです=自然写真家・斎藤政広撮影(1998年5月19日、鳥海山にて)


2010年(平成22年) 1月13日(水)付紙面より

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手際良く枝落とす 果樹の剪定作業進む

 果樹畑が広がる鶴岡市羽黒町で、庄内柿の剪定(せんてい)作業が進められている。来秋の収穫に向けた重要な作業で、雪に埋もれた果樹畑で生産者がはさみやのこぎりで手際良く枝を落とす姿が見られた。

 庄内柿の剪定作業は、良い母枝(実をつける枝)を残すために行われる。枝が多いと養分が分散するため、しっかり実に栄養が行くように余分な枝を落としていく。樹木全体にまんべんなく日光が当たるよう、バランス良く剪定するには長年の経験が必要となる。

 12日に同市羽黒町猪俣新田の果樹畑で剪定作業を進めていた60代の男性生産者方では、約80アールの畑に約60本の柿の木があり、今冬は今月10日に作業を開始したばかりという。

 男性は「先月の大雪でラフランス数本が幹から裂けてしまった。柿は育つまで時間がかかるが丈夫。幹への被害はなかった。今後も天気を見ながら作業を進める」と話しながら、剪定ばさみやのこぎりを巧みに使い、手際良く枝を落としていた。

雪に埋もれた果樹畑で剪定作業が進められた=12日、鶴岡市羽黒町猪俣新田
雪に埋もれた果樹畑で剪定作業が進められた=12日、鶴岡市羽黒町猪俣新田


2010年(平成22年) 1月13日(水)付紙面より

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米粉の用途拡大へ 高性能製粉機を導入

 庄内みどり農協(阿部茂昭組合長)が導入した性能の高い米粉製粉機の据え付け工事などが終わり、設置された同農協の農産物直売所「みどりの里・山居館」(酒田市山居町一丁目)で12日、完成式典が開かれた。新製粉機は洋菓子などの原料にも使える微粒子にすることが可能で、関係者は米粉の用途や需要の拡大につながると期待している。

 同農協では、コメの消費拡大策の一つとして米粉に着目。2006年に米粉製粉機を導入し、山居館で製粉事業をスタートした。同農協女性部が米粉を使ったさまざまな菓子や料理を考案・普及する一方、同農協は庄内産はえぬきの米粉4割と北海道産小麦粉6割の乾麺「米のかおり」を発売。米粉の生産量は06年度の880キロから08年度には3トン近くまで伸びた。

 こうした状況を踏まえ本年度、県と酒田市の補助を受けて新しい米粉製粉機を購入。昨年12月から山居館の倉庫の一部を製粉機用の部屋に改装し、製粉機とタンクなど付帯機器を整備した。事業費は945万円。県と市が4分の1ずつ補助した。

 製粉機は旋回気流式微粉砕機と呼ばれる最新式のもので、コメをいったん粗く砕いた後、ファンによって生じさせた高速気流の中に投入し、米粒同士がぶつかることで細かい粉にする。

 粒子の大きさは、同農協が06年に導入した製粉機と同じ100メッシュ(平均粒径150マイクロメートル=0・15ミリ)から、400メッシュ(同35マイクロメートル=0・035ミリ)まで変えることが出来る。1時間当たりの製粉能力は200メッシュで10キロ。

 この日は関係者約50人が出席して完成式典。阿部組合長が「新しい米粉製粉機の導入により農商工連携をさらに進め、米粉の需要を喚起するとともにビジネスモデルの確立を図る」、阿部寿一市長が「庄内みどり農協にはタイムリーに取り組んでもらえた。市としても普及促進に努力していく」とあいさつした。

 テープカットに続き、阿部組合長が新米粉製粉機のスイッチを入れて機械を始動。従来の4倍も粒子が細かくなった米粉を手に取って感触を確かめた参加者は「かたくり粉みたい」「ギョーザの皮にも使えそう」などと話していた。

 製粉機の利用料は1キロ当たり200円(200メッシュまでの場合)。申し込みは山居館=電0234(26)6222=へ。

新しい米粉製粉機で加工された粒子がより細かい米粉の感触を確かめる完成式典出席者
新しい米粉製粉機で加工された粒子がより細かい米粉の感触を確かめる完成式典出席者



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