2011年(平成23年) 4月15日(金)付紙面より
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放射線基礎知識の学習会が13日、酒田市の庄内バイオ研修センターで開かれ、同センター所長で東京大名誉教授の山口彦之さんが「放射線と放射性物質の初歩的知識」と題して講演した。
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所(福島県双葉郡)の事故で関心が高まっているヨウ素131やセシウム137といった放射性物質が、人体や農作物などに与える影響を正しく理解し、共通認識の下で的確な対応を図ろうと、放射線生物学の世界的権威である山口所長を講師に招き、市が開いた。
山口所長は、ベータ線やガンマ線など「放射線」を放出する能力がある性質が「放射能」で、その性質を持つ物質が「放射性物質」とし、電球を放射性物質に、光を放射線に例えて解説した。
また、ベクレルは放射線を出す能力の強さ、グレイは人体など物に吸収される放射線のエネルギー、シーベルトは放射線が人体に与える影響の程度を、それぞれ表す単位と説明。例えばガンマ線を一時的に被ばくした場合、250ミリシーベルト以下では症状がほとんど現れず、500ミリでは白血球数が一時的に減少し回復するが、4シーベルトでは被ばく後30日以内に半数が、7シーベルトではほぼ全員が死亡するとした。
一方で、被ばくした人から子孫に伝わる放射線の影響が、人間では確認されていないことを強調。チェルノブイリ原発事故で被ばくしたベラルーシの子供やアメリカの原子力船修理工、イギリスの放射線科医ら少ない量の放射線を長期間にわたって被ばくしている人と、がんで死亡する人との相関関係も認められないと話した。
学習会参加者との質疑応答で、食品衛生法に基づく放射性物質の規制値は国際放射線防護委員会の勧告に従ったもので、規制値以下であれば健康に問題ないことを明言。原発事故によって野菜から検出された放射性物質は表面に付着しており、「水で洗えば落ちるものではないか」との認識を示した。さらに、重金属のような食物連鎖による放射性物質の蓄積に関しては、チェルノブイリ事故後の調査結果から「ロシアでは心配されるような影響は出ていない」と述べた。
同市、県、農協の職員ら約60人が聴講した。