2011年(平成23年) 12月2日(金)付紙面より
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鶴岡市青龍寺にある旧黄金村役場の建物が、老朽化に伴い本年度内に解体されることになった。同市出身の作家、藤沢周平さんが青年期の3年間、「書記補」として勤務した役場で、ゆかりのある建物。そうした経緯から所有する市は、移築して再利用を希望する個人、団体に解体した部材を無償譲渡することを決め、1日から譲渡希望者の募集を始めた。すでに地元をはじめ県内外から問い合わせがあるという。
旧黄金村役場は、75年前の1936(昭和11)年に建てられた。黄金村高坂生まれの藤沢さんは国民学校卒業後、旧制鶴岡中学校夜間部に進み、山形師範学校に入学するまでの43年から3年間、村役場の税務課書記補として勤めた。
役場の建物は木造瓦ぶき2階建て一部土蔵造りで、延べ床面積552平方メートル。外壁は下見張りとなっている。55年に黄金村が鶴岡市に合併した後は、地区公民館やコミュニティセンターとして96年まで利用され、近年は市の資材置き場などとして活用された。
2006年に黄金地区の自治振興会から市に、建物の安全面や防犯上の理由で解体の要望があったが、市が計画していた藤沢周平記念館の整備構想に関連して、「役場を活用して記念館にしては」といった声が寄せられたこともあり、解体は見送られた。
同記念館が昨春、鶴岡公園内に開館したこともあり、昨年12月にあらためて同地区から要望が出されていた。藤沢ファンからは、現在地での保存を望む声も届いているという。こうした経緯も考慮し市は、希望者に部材を無償提供する形で解体することにした。
市は▽腐食などで使用できない部材以外は全てを譲り受ける▽仮置き場からの運搬の費用は自己負担する▽契約締結日から10年間は、申請した用途で使用する―などを譲渡の条件としており、移築再生後の商業専用などには審査で制限を設ける。募集は来年1月10日まで行い、複数の応募者があった場合は公益的活用目的を優先して譲渡する。部材の引き渡しは来年3月下旬以降の見込み。
応募に当たっては所在地や個人、団体、法人を問わない。応募がない場合は取り壊し、跡地を地元からの要望がある駐車場として利用する予定。管理する市総務部は「財政的にも厳しく市で保存、活用するのは困難。ただ、藤沢周平さんゆかりの施設でもあり、単に取り壊すのでなく、希望する人があれば譲り受けてほしいと考え、募集することにした」と説明している。譲渡に関する問い合わせは、市契約管財課=電0235(25)2111、内線335=へ。
2011年(平成23年) 12月2日(金)付紙面より
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酒田市の泉小学校(大川英一校長)の5年生80人が1日、自ら栽培してきた紅花を使って染めを体験した。同市出身で現在、山形大大学院地域教育文化研究科修士課程1年で学んでいる竹越友美さん(23)の指導で、児童たちは白い毛糸や羊毛を次々と鮮やかな色合いに。今後、これらを使用しマフラーやハンカチなどを制作、来年1月に同市中心部で開かれる日本海寒鱈まつりで販売する予定。
庄内地域でも食用の紅花が栽培されているということを知り5年生は今年、同校で進めているキャリア教育の一環で、紅花の栽培から染め、制作、販売までを一貫して体験することにした。
東北芸術工科大の学生時代、紅花染について学んできた竹越さんを外部講師として招き、学校近くの畑約4アールを借り受けて児童たちは今年4月、種をまいた。その後、観察活動をしながら、竹越さんの指導で栽培を継続し、同7月に花を摘んだ。乾燥させたところ、約500グラムの紅餅になったという。
この日は、児童たちが6班に分かれ、それぞれ作業。あらかじめ竹越さんが調合していた紅花液が入ったプラスチック製たらいに毛糸や羊毛、木綿を浸した。しばらくたつと、繊維は淡いピンク色や黄色に。児童たちはきれいに仕上がるように繊維をぐるぐると回し続けていた。
鈴木佑誠君(10)と小松遥斗君(11)は「一番大変だったのは、花の収穫作業。とても痛かった。それでもこんなにきれいな色になったので、苦労してきて良かった」と笑顔で話していた。
大塚教諭によると、児童たちは今後、染めた繊維を使ってマフラーを編んだり、フェルトのキーホルダー、ストール、ハンカチを制作。寒鱈まつりで販売し、経費を差し引いた余剰金は、東日本大震災の被災地支援に向けた義援金や、クラスで必要な物の購入費に充当するという。