2018年(平成30年) 9月19日(水)付紙面より
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ぼくたちのおなかでそだてたなすが ぼくといっしょにおおきくなった♪―。鶴岡市の小堅保育園(土岐育子園長、園児17人)の園児たちが、地域の人たちと交流しながら育てた在来作物「波渡(はと)なす」を取り上げたミュージカル「しあわせのタネ」が11月16日(金)に同市の荘銀タクト鶴岡(市文化会館)で上演される。15日に同園で今年の「波渡なす収穫感謝祭」が開かれ、舞台脚本を手掛ける脚本家の坂口理子さんが取材に訪れた。
丸い大きな波渡なすは、小堅地区の隣近所のおばあちゃんたちが長年、種を絶やさず自家栽培用に育ててきたもの。同園では“地域の宝物”の在来作物を3年前から園児たちの食育に取り入れている。栽培の先生は80―90代の4人の“波渡なすばばちゃん”。園児たちのおなかで種を温めて芽出しを行い、畑を耕し、お世話をし、収穫を喜び合い、次の年へ種の取り方も教わった。今では同園で取った種が地域の畑にも広がっている。
栽培を担った3歳児以上の園児9人と波渡なすばばちゃんを囲んだ収穫感謝祭では、園児たちが波渡なすの歌で「おおきくなれ おおきくなれ はあ」とおまじないのパフォーマンスを披露。波渡なすと長ナスの食べ比べや収穫を楽しんだ後、ステーキやみそ汁、カナッペなどのメニューにして昼食で味わった。
収穫したナスを手に熊谷莉子さん(6)は「ナスのステーキや丸焼きは甘くておいしいよ。おなかで温めたナスが大きく育ってうれしい」と笑顔を見せた。波渡なすばばちゃんの本間サタ子さん(85)は「子どもたちと一緒だと楽しくて笑顔になる。健康の秘訣(ひけつ)」と話し、ばばちゃん4人が「ミュージカルが楽しみだ」と声をそろえた。
「しあわせのタネ」は食と命を主題に、全国各地の在来野菜を取り上げ、アレンジした舞台。坂口さんはジブリ映画「かぐや姫の物語」(高畑勲監督)の共同脚本などを手掛けており、鶴岡市では2014年に「藤沢かぶ」を取材して舞台化した。
坂口さんによると、11月の舞台には小堅保育園の園児や卒園児の十数人に出演してもらい、収穫感謝祭でも披露した歌「小さなタネの物語?みんなの波渡なす」を歌ってもらうほか、波渡なすばばちゃん役も登場させるという。
坂口さんは「在来種を通したすてきな地域のつながりを現地で感じることができた。脚本に手を加えて鶴岡バージョンに仕上げたい」と話した。
2018年(平成30年) 9月19日(水)付紙面より
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旧庄内藩校致道館の教育継承を目的とした「孔子祭」と「致道館の日」の式典が17日、鶴岡市馬場町の致道館と荘内神社で行われた。論語素読や記念講演、小学生の作文発表などを通して、藩校教育の精神と文化を市民が見つめ直した。
致道館での孔子祭は、1805(文化2)年の開校以来、同館にある聖廟(せいびょう)で年2回開催していたが、1873(明治6)年に同館が廃校となり、その後途絶えていた。致道館精神を継承する活動に取り組む致道館文化振興会議(会長・橋本政之荘内日報社社長)の主催で2000年、128年ぶりに復活。以来毎年この時期に行っている。
この日は、会員をはじめ同振興会議主催の素読教室を受講している児童など、合わせて約70人が参列。神事に続き橋本会長が祝文を奉読した後、全員で論語抄第58―60章を素読。その後、同振興会議の酒井英一理事が論語・衛霊公第15篇「子曰。賜也。女以予為多學而識之者與。…」を講経した。
続いて「致道館の日」の式典が行われ、荘内神社の石原純一宮司が「致道館の日に寄せて」と題して講話。その後、荘内神社参集殿に会場を移し、第10回児童・生徒論語作文発表会が行われた。市内の小学4年生から中学3年生までの5人が、思い入れのある論語や、論語の教えを生活の中で実践したエピソードなどを紹介。「素晴らしい庄内論語がある鶴岡に住んでいることに誇りを持ち、未来へ向かっていきたい」などと発表した。
記念講演では、元県立鶴岡中央高校長で松ケ岡開墾場理事の山田陽介さん(66)が「佐藤一斎『言志四録』を読む 西郷南洲手抄101章より」と題して講話。江戸末期の儒学者・佐藤一斎が自身の学問観や人生観などを述べた4書全1133条から成る「言志四録」について、終生愛読した西郷が1133条から選び出したエキスともいえる101条の一部を解説した。