2019年(令和1年) 8月22日(木)付紙面より
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酒田市松山地域に伝わる松山能(県指定無形民俗文化財)が20日夕、同地域の本町皇大神社(宮本正芳宮司)の神明神社能楽堂で奉納上演され、幽玄な舞が訪れた能楽ファンを魅了した。
松山能は350年以上の歴史を持ち、明治以降は地元の演能団体「松諷社」(榎本和介会長)が継承。本町皇大神社の上演は「月の能」として、6月の「花の能 薪能」、1月の「雪の能 大寒能」と、松山能の年3回の恒例の演能行事となっている。
松諷社顧問の齋藤康二さん(87)=酒田市片町=によると、本町皇大神社には1885(明治18)年ごろ、黒川能(鶴岡市、国指定重要無形民俗文化財)が招かれて上演され、それを機に87(同20)年ごろ、能楽堂を建設、以後、夏の例祭に合わせ松山能が奉納上演されている。現在の能楽堂は1980(昭和55)年ごろに建て替えられた二代目。能舞台を持つ異色の神社として、住民が松山能の奉納上演とともに誇りにして守り伝えている。
この日は午後6時半、本町在住者を含む小学生による子ども狂言「盆山(ぼんさん)」で開幕。引き続き松諷社が能「竹生島(ちくぶじま)」を上演した。前段で登場した漁師の老夫婦が、後段で神々しい姿の龍神と弁財天の本性を現して舞うと、詰め掛けた観客は引き込まれるように見入っていた。
2019年(令和1年) 8月22日(木)付紙面より
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県主導で昨年度に立ち上げた「さといも生産振興プロジェクト会議」の現地検討会が20日、酒田市坂野辺新田の実証ほなどで行われた。県内全域の生産者やJA、流通関係者らが、芋煮シーズンに合わせ、砂丘地で早生種「大和早生(やまとわせ)」を栽培し8月下旬ごろから収穫できる新たな取り組みについて学んだ。
同プロジェクト会議は2018年5月、県主導で県内の量販店や食品製造業、卸売市場、JA、市町村などで立ち上げた。芋煮が本県を代表する食文化として普及する一方で、県産サトイモの収穫期は9月下旬から10月にかけて。このため特に芋煮会シーズン初めには九州など県外産が大量に出回り、県産は市場ニーズに十分に応えられていない状況から、生産拡大を図る狙い。県内各地で県の機関が中心となって試験研究に取り組んでいる。
このうち庄内地方では、県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室(酒田市浜中、佐藤武義室長)が中心となり、砂丘地での早掘り栽培に取り組んでいる。庄内の砂丘地は雪解けが早く、春先に他より早く作業を始められる上、給水用の灌水(かんすい)チューブが普及しているため、ほとんど新たな投資をせずに導入し、地元産がほとんど出回らない時期に比較的高値での販売が期待できるため。
同研究室では14年度から予備試験を始めていた。品種としては内陸で主流の「土垂(どだれ)」、「石川早生」などと比較し、生育状況や食味などから「大和早生」を有望とした。砂丘地の特性を生かし、芽出しを3月半ば、定植を4月半ばと、慣行より1カ月ほど早く作業を進め、マルチ栽培(黒ビニールで土を覆い雑草の繁茂を防ぐ方法)、タイマー付きの灌水チューブによる自動給水などで、8月下旬から9月下旬に収穫できるノウハウをほぼ確立。16年度から庄内各地のJAに依頼し、実証ほで課題を詰めている。うち酒田市のJAそでうら管内の実証ほは、15人の計約2ヘクタール。
この日の現地検討会には関係者約40人が参加。酒田市坂野辺新田の砂丘地で、17年度から約20アールで大和早生の早掘りの実証試験に取り組んでいる佐藤幸喜さん(56)のほ場、産地研究室のほ場をそれぞれ視察し、情報交換した。
このうち坂野辺新田のほ場で、佐藤さんは「息子が親元就農したいというので、新たな作物を探していた時、JAにサトイモを勧められた。最初は砂丘地でサトイモができるわけがないと思っていたが、良いものができ、今はやって良かったと思う。期待している」と手応えを語った。
産地研究室のほ場では、この時期に収穫すると、M、Sサイズと比較的小ぶりが中心だが、1株当たり250―300グラム、10アール換算で600キロ程度を収穫できる。砂丘地は雨が降っても芋に土が付かないため、収穫も楽という。