2019年(令和1年) 8月30日(金)付紙面より
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県内の環境関連のNPO法人などでつくる市民団体「ドリームやまがた里山プロジェクト」(代表理事・小谷卓鶴岡高専名誉教授)が今夏、使用済みとなった車のエアバッグやシートベルト、廃材となる食品用発泡スチロールを再利用したライフジャケットを開発した。庄内浜の海のイベントで提供し、海上の安全と海洋環境保全に関する啓発活動に活用。使用した人たちからは「浮力も十分。エアバッグなどでここまでできるとは」と感心の声が聞かれた。
同団体は2015年、庄内地域の団体を中心に設立され、現在は会員22団体、賛助会員1団体で構成している。自動車の使用済みパーツの再利用は、県内で廃棄される車両が年間約4万台に上っていることに着目し、資源循環型社会を目指す「自動車のリサイクルによる安全で豊かな海を―山形方式」として本年度、日本財団「海と日本プロジェクト」の助成を受け、取り組みを進めた。
県自動車販売店リサイクルセンターからエアバッグやシートベルトを取り寄せ、染色や縫製を県内の障害者就労支援施設に有償で依頼。浮力となる発泡スチロールはエーコープ庄内などから無償で回収するなど、県内の多様な団体、事業所の協力を得て、大人用Lサイズと子ども用Mサイズ計100着を7月までに製作した。
同団体は完成したライフジャケットを活用し、海や川での遊びの安全のため着用率の向上を呼び掛ける啓発事業にも力を入れている。今月4日に鶴岡市鼠ケ関のマリンパークねずがせきで行われた障害者の「山形バリアフリービーチ大作戦」では、海水浴やカヌー遊びを楽しむ障害者の人たちや、支援するスタッフが着用し、庄内浜の海遊びを楽しんだ。
海で使い勝手を確認したスタッフの一人は「中の発泡スチロールがしっかりしていて、こんなにも浮くかなという感じ。すごい浮力だ。シートベルトの縫製を含め丈夫に仕上がっていて、再利用で作ったものとは思えないほど」と高く評価。
また、10日には酒田市で行われたガールスカウト県連盟のイベントでも、55人の参加者を対象にライフジャケットの着用講習に活用。安全の意識高揚に役立てられた。
秋にかけて、こうした啓発事業を展開し、その後は海辺に関わる団体への寄贈を検討している。ドリームやまがた里山プロジェクトの高橋雅宣事務局は「人の命を守ってきた使用済み自動車のエアバッグやシートベルトがリサイクルされ、再び海や川で人の命を守るライフジャケットとして生まれ変わることは、とても意義深い」と話している。
2019年(令和1年) 8月30日(金)付紙面より
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昨年1月まで本紙・荘内日報に連載していた「森の時間―山形大学農学部からみなさんへ」の写真を担当した自然写真家、斎藤政広さん(70)=酒田市日吉町一丁目=が、鳥海山に咲く花140種を写真と文章で紹介した写真集「鳥海山花図鑑」(みちのく書房)=写真=を発刊した。
斎藤さんは横浜市出身で、1984年に酒田に移り住んだ。主として庄内地域の自然をモチーフにした作品を撮り続けており、中でも「鳥海山とブナ」をテーマにした作品には定評がある。毎年4―5月に市内で個展を開催、酒田に新緑の季節到来を告げる風物詩となっている。主な著書・写真集に「鳥海山・ブナの森の物語」(無明舎出版)、「ブナの声」シリーズ(自費出版)などがある。
今回の写真集は、2010年に刊行した「鳥海山花図鑑」を全面リニューアルしたもので、既刊に20種加え、さらに新たな情報を盛り込んでいる。鳥海山に咲く花140種の和名や別名、学名とともに、分布、観察に役立つ情報も収録。色別に記載しているのが特徴となっている。「花の栞」と題したコラムも掲載した。
鳥海山を代表する「チョウカイフスマ」の項目では、草丈、花期、学名といった情報の他、「その美しい花の形から学校の校章にも多く採用されています。高山帯の岩場や砂れき地をはじめ、岩の割れ目などでも見られるように根が深く、他の植物が入り込めないような過酷な環境の中でも生きていくことができるたくましさをもった花です。多年草」などと記している。
四六判、160ページ。オールカラー。1700円(税別)。本書に関する問い合わせは斎藤さん=電0234(23)3822=へ。