2020年(令和2年) 2月18日(火)付紙面より
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酒田市黒森地区に約280年前から伝わる伝統芸能「黒森歌舞伎」(県指定無形民俗文化財)が15、17日の2日間、地区の日枝神社境内の常設演舞場で奉納上演され、国内外の伝統芸能ファンを楽しませた。来月8日(日)には同市の希望ホールで酒田公演も行われる。
江戸・享保年間(1716―35年)に始まったといわれる。地区住民による妻堂連中(五十嵐良弥座長)が受け継ぎ、昨年11月には初の海外公演としてポーランドにも出張した。
正月公演は屋外で鑑賞するため「雪中芝居」と呼ばれるが、今年は記録的な少雪のため15日は全く積雪がない状況。「穏やかな天候と、ポーランド公演による関心の高まりもあり、観客は例年になく多い」(関係者)と、会場は外国人を含めてほぼ満席となり、大勢の立ち見客も出た。
妻堂連中は10年ぶりとなる演目「義経千本桜」の「伏見稲荷鳥居前の場」「摂州渡海屋の場」の2幕を演じた。「鳥居前」はポーランドでも演じたもの。義経や弁慶、静御前、佐藤忠信らなじみの役柄が登場し、大立ち回りや笑い、涙の別れと、見どころ満載の舞台に、観客は引き込まれるように見入った。
ポーランド公演を仲介した日本文化研究家で、同国アダム・ミツキェヴィチ大准教授のイガ・ルトコフスカさんも応援に駆け付けた。本紙の取材に対し、イガさんは「ポーランド公演は大成功だった。2会場、4公演で計約1000人が日本の地域の伝統文化の雰囲気を味わうことができた」と感想。また、「日本の地芝居はプロと違い、祭りとしての要素や民俗、信仰とのつながりも深く、興味深い。ポーランドでは社会主義時代に伝統的なものが排斥され、多くが失われた。一度失われたら、復活は難しい。黒森で高校生を含め若い世代が参加しているのは素晴らしいこと。これからも大切に守り伝えていってほしい」と話した。酒田公演は正午から。入場料は前売り500円、当日700円(未就学児は無料)。問い合わせは黒森コミュニティセンター=電0234(92)2255=へ。