2020年(令和2年) 10月8日(木)付紙面より
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JR東日本(本社・東京都)は、突風を探知し列車運転規制に運用している酒田市黒森の「ドップラーレーダー」について、気象庁気象研究所と共同研究を進めてきた人工知能(AI)を活用した探知手法の実用化のめどが立ったとし、来月1日(日)からこの手法を取り入れた運転規制をJR羽越本線と陸羽西線の一部区間に導入する。同社によると、AIを活用することで突風の原因となる「上空の渦」の捕捉性能向上、誤探知の軽減が図られるという。
庄内町榎木のJR羽越本線で2005年12月、特急いなほ14号が突風にあおられて転覆・脱線し、乗客5人が死亡、乗客・乗員33人がけがをする事故が発生した。その対策として同社と気象研究所は共同でドップラーレーダーに関する研究を開始し、当初は07年1月に同町の余目駅に観測範囲が半径約30キロのものを設置。これに代えて同約60キロのものを黒森地区に設置し、17年12月から運転規制に運用している。
これまでは渦でないものを渦と認識してしまう誤探知があった。今回、AIに「渦」と「渦でない」画像データを学習させ、判別する「学習済モデル」を構築。渦を渦として認識する捕捉性能が向上する一方、渦でないものを渦と判断してしまう誤探知を軽減。運転規制の実施区間は、羽越本線は今川(新潟県村上市)―羽後本荘(秋田県由利本荘市)間に拡大される。陸羽西線はこれまで通り、余目(庄内町)―清川(同)間。
ドップラーレーダーは上空に音波を発し、水蒸気などに反射して返ってくる音波を分析して風を観測するもの。同社と気象研究所はこれを用いて、近づく風と遠ざかる風のペアを「風の渦」として捉え、突風(藤田スケールで毎秒33―49メートルのF1以上)をもたらす可能性のある渦を探知、その強さや移動速度、渦がもたらす最大風速・予測進路などを算出する技術を確立した。