2021年(令和3年) 5月26日(水)付紙面より
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「夜明けのうた」などのヒット曲で知られる酒田市出身のシャンソン歌手、岸洋子さん(本名・小山洋子、1934―92年)の生誕88年、そして30回忌を迎えたことを受けた企画展「岸洋子回顧展」が、市美術館市民ギャラリーで開かれ、デビュー直後の写真、リサイタルのフライヤー、レコードなどの資料を通じ、いまだ全国に根強いファンを持つその歌と人生に光を当てている。
岸さんは浜田小時代から声楽家・加藤千恵氏に師事し、酒田東高、東京藝大声楽専攻科卒。オペラ歌手を志したが、病気のため、予定していたドイツ留学も断念して治療に専念。その間、友人にもらったエディット・ピアフのレコードを聞いたことをきっかけに1959年、シャンソン歌手としてデビュー。64年に「夜明けのうた」、70年に「希望」で2度の日本レコード大賞歌唱賞を受賞。64―71年にはNHK紅白歌合戦に7回出場。「希望」は71年、選抜高校野球大会の入場行進曲にも選ばれた。
70年9月、酒田での公演直後に倒れて入院。膠原(こうげん)病と診断され、闘病しながら演奏活動を継続、76年10月の酒田大火直後は全国でチャリティーコンサートを開き、収益金を復興のため同市に寄贈。その功績で79年には紺綬褒章、88年には酒田市特別功労表彰を受賞した。
今回の回顧展は、岸さんの誕生日(5月23日)に合わせ、岸さんの楽曲を歌い継いでいくことを目的に諸活動を展開している同市の「岸洋子を歌いつぐ会」(櫻田常夫会長、11人)が初めて企画した。
会員と共に、群馬、新潟、大分の各県在住のファンが持ち寄ったLP・EPレコード約60枚、リサイタルを告知するフライヤー、レコード発売時のポスター、サインなど計約150点の資料を展示。酒田二中創立20周年記念音楽会(1967年9月)で歌声を披露した際の集合写真、市特別功労表彰受賞、デビュー30周年を記念し89年7月、旧酒田市民会館で開催したリサイタル(市、荘内日報社など後援)のフライヤーなどが来館者の目を楽しませている。会場では岸さんの映像も流している。
櫻田会長は「岸さんの思い、人間性を若い人たちに語り継いでいきたい。世界に名だたるシャンソン歌手がここ酒田から輩出されたということを多くの人から知ってもらえたら」と話した。入場無料。展示は30日(日)まで。