2021年(令和3年) 8月13日(金)付紙面より
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慢性的な人材不足や業務内容の偏りなど産科医療に関する課題が山積する中、鶴岡市立荘内病院(鈴木聡院長)の助産師1人が同市の産婦人科・小児科「三井病院」(三井卓弥院長)に派遣されることになり11日、協定締結式が荘内病院で行われた。県看護協会の仲介の下、県の助産師出向支援事業を活用したもので、正常分娩の件数が多い三井病院で実務経験を積み、荘内病院で生かすという。
庄内地方の分娩取扱施設は、2008年は10施設あったが、18年以降は5施設(鶴岡市3施設、酒田市2施設)に半減。産科医療の現場では全国的な傾向として、慢性的な人材不足に加え、妊婦の高齢化に伴い出産リスクが高まる傾向にある。また、病院には異常分娩、診療所には正常分娩がそれぞれ集中しスタッフの経験も偏るなど、課題が山積しているという。
助産師出向支援事業はこうした実態を受け、マンパワーの補完や研修などの狙いで助産師が出向する場合、給料の差額を補てんするもの。2013年度に県看護協会が厚生労働省の助成を受けて始め、15年度からは県が同協会に委託して継続している。これまで米沢市(市立病院から島貫医院)、酒田市(日本海総合病院からいちごレディースクリニック)で実績があり、今回が3例目(派遣助産師延べ6人目)となる。
今回出向するのは、助産師として荘内病院に勤務し3年目という難波ゆいさん(25)。これまでの分娩取扱は約80件。出向は今月16日から来月10日までで、様子を見て数カ月単位で延長の可能性もあるという。荘内病院側では正常分娩が多い三井病院で実務経験を積んでもらい、三井病院側では荘内病院との連携を強めるメリットがあるという。
この日の協定締結式では、県看護協会の若月裕子会長、三井病院の三井院長、荘内病院の鈴木院長の3人が協定書に署名、調印。若月会長は「分娩件数が減少し、取り扱い経験がゼロという人もいる。どこにいても経験できるようにしたい」、三井院長は「より多くの妊婦に接することが良い経験になる。病院との連携を強め、安全な産科医療を提供したい」、鈴木院長は「派遣事業を通じ、お互いが信頼関係を強め、安全な産科医療にまい進したい」とあいさつ。難波さんは「他施設で経験を積み、戻ってきた時、学んだことを生かしたい」と抱負を語った。
荘内病院の助産師は22人で、年間の分娩取扱件数は約300件、うち約半数が帝王切開を含む異常分娩。一方、三井病院の助産師は13人で、年間の分娩取扱件数は約500件、その大半が正常分娩。以前から新人助産師は荘内病院で研修し、リスクの高い妊婦は同病院に移すなど連携しているという。