2021年(令和3年) 12月9日(木)付紙面より
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酒田市の新田産業奨励賞記念講演会が7日、同市の東北公益文科大公益ホールで開かれ、共に公益大客員教授で、日本総合研究所会長の寺島実郎さん、同市出身の評論家・佐高信さんが登壇。講演と対談で今般のコロナ禍を踏まえ、中国を中心としたアジア地域の経済成長の中に埋没する日本の危機感、そこから脱却するための方策などについて語った。
市と公益大が2012年から毎年、公開講座を兼ねて開いている。今回は「生き残る地域となるには―世界認識と日本の指針」をテーマに掲げ、市民、学生計約250人が参加した。
第1部は寺島さんが講演。冒頭、感染拡大が依然として続く新型コロナウイルスについて「地球の歴史は46億年とされる。ウイルスは30億年もの歴史を重ねてきた。人類の歴史は20万年にすぎない。テーマはウイルスとの共生。どう賢く共生していくかだ」と指摘した。
世界全体のGDP(国内総生産)に占める日本のシェアがピーク時の1994年(17・9%)に比べ、2020年には3分の1の6%まで落ち込んだことを挙げ、「新型コロナが日本経済の弱点をあぶり出した」と。その上で、日本経済復活に向け、米中貿易を見据えた酒田港をはじめとした日本海側の港湾振興、「デジタル改革(DX)」、脱炭素などの「グリーン」によるイノベーション、「食と農」「医療・防災」のファンダメンタルを強調した。
第2部では寺島さんと佐高さんが、中国をはじめとしたアジア地域、ロシアなど日本海物流における酒田港の重要さなどについて対談。「このままでは北陸に持っていかれる。北前船を思い出してほしい」(寺島さん)、「魯迅は夏目漱石を尊敬していた。中国との交流は人物に戻る必要がある」(佐高さん)とそれぞれ語った。
会場に詰めかけた学生に向け、寺島さんは「心の基軸は若いうちに養ってほしい。基軸をしっかりと持って生き抜く力を付けてほしい」と呼び掛けた。