2022年(令和4年) 5月28日(土)付紙面より
ツイート
今夏参院選山形選挙区
自民県連29日正式決定へ
今夏の参院選山形選挙区(改選数1)を巡り、自民県連から立候補の要請を受けていた元県議の大内理加氏(59)=山形市=が26日、立候補の意思を固め県連側へ伝えたことが分かった。大内氏は26日、荘内日報の取材に「短い期間で重い決断をすることになった。準備の時間も少なく厳しい戦いになるが全力で戦いたい」と述べた。県連は29日に山形市内で会合を開いて、大内氏の擁立を正式に決定する。
大内氏は26日午前、自民党選対委員長を務める遠藤利明県連会長(衆院山形1区)へ、立候補の要請を受ける考えを伝えたという。大内氏は取材に「突然の要請で悩んだが、後援会や周囲の人と相談し立候補の意思を固めた。岸田政権の評価や与党への票の受け皿が山形だけにない現状を何とかしたい。準備期間もなく厳しい戦いとなるが頑張りたい」と話した。
山形選挙区を巡って、自民は政策面で連携を図る国民民主党に配慮し、独自候補の擁立を見送る方向で最終調整していたが、県連内の反発が強く、国民との交渉もまとまらず、方針を一転。遠藤県連会長が今月23日、大内氏に出馬を要請していた。
大内氏は2007年の県議選(山形市区)で初当選。県連総務会長や女性局長を歴任。4期目途中で辞職し、21年1月の知事選に自民党推薦で立候補したが、現職に敗れた。
参院選山形選挙区にはこれまでに、国民民主党筆頭副代表で現職の舟山康江氏(55)、共産党新人の石川渉氏(48)、NHK党新人の小泉明氏(51)の3人が立候補を表明。参政党山形支部が候補者の擁立を探っている。
山形選挙区は自民としては、参院選の全国32の改選数1の「1人区」で、最後の候補者決定となる。政権与党の候補者擁立で、同選挙区は一転して与野党対決の構図が固まりつつある。自民県連は「大内氏は昨年の知事選に出馬し知名度もあり、県連のネットワークを駆使して浸透を図る」、共産党県委員会は「野党共闘から離れた国民民主は自公政権とともに批判される。県民の審判がどう出るか、はっきり示されるだろう」、舟山陣営は「とにかく陣営全体が気を引き締め、しっかり選挙戦に臨むだけ」とそれぞれ話した。
2022年(令和4年) 5月28日(土)付紙面より
ツイート
復活水田にはえぬき 9月収穫
除草ロボット活躍「完全無農薬」
50年以上使われていない耕作放棄地を蘇らせようと山形大農学部(村山秀樹学部長)の学生と農家ら関係者が、鶴岡市中山地区の荒れ果てた農地を復元した。生い茂った木を伐採して土を耕し、水田に戻してはえぬきの苗を植えた。田んぼには太陽光発電で自動的に動く除草ロボットを入れ「完全無農薬」で栽培する。学生は「第一段階として昭和初期の農村の姿を取り戻すことができた。これからは無農薬栽培を通じて自然環境と調和した稲作を学びたい」と話している。
応用動物学を専門とする佐藤智准教授と学生が、かつて田んぼにたくさんいた「タニシ」に着目。農薬による近代農業で、いまでは準絶滅危惧種のタニシを使った自然農法について研究している。
昨年の春、佐藤准教授らの取り組みを知った中山地区の農家・佐藤好明さん(60)が全面的に協力。所有する水田に「マルタニシ」を入れ、そのフンを有機肥料にして稲を育てた。今回は山大農学部のほか慶應義塾大先端生命科学研究所、中山地区の地域住民らが新たに加わり「放棄地再生プロジェクトチーム」(メンバー約20人)を結成。低木やクマザサなどで覆われた放棄地を「開拓」した。
「木を切って根っこごと掘り起こす作業は大変だった。代掻(か)きした水田の光景を見たときは農家として充実感さえ覚えた」と佐藤さん。広さ約20アールの田んぼを復元するまで数カ月を要したという。土砂で埋もれた用水路も元に戻した。
復活田では、化学肥料や除草剤などは一切使わない。ヤマガタデザインのグループ会社「有機米デザイン」が実用化に向けて実証実験を重ねている自走式の除草ロボットを導入、労力をカットする。田植えした田んぼには、今回もミジンコやイトミミズ、藻類を増やして水田の生態系を豊かに保つ「マルタニシ」を入れた。
佐藤准教授は「半世紀ぶりに耕作放棄地を復活させた例は全国的に見ても初めてではないだろうか。放棄地を財産に変え、自然循環型農業の確立を目指したい。今から収穫が楽しみ」と話す。
インドネシアの留学生アリーナさん(28)は「復元した田んぼで水生生物や昆虫がどのように回復していくか、とても興味がある」と語った。
収穫は9月中旬を予定している。佐藤さんによると、10俵ぐらい取れそうだという。米は完全無農薬を全面に出してネット販売することにしている。