2022年(令和4年) 5月8日(日)付紙面より
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クラフトビール醸造・販売を通し「酒の酒田」を広く全国に向けてPRしようと、酒田市内の飲食店に集う3人が中心となって「酒田クラフトビールプロジェクト」が始動した。鳥海山の湧き水、酒田産農産物などを用いて幅広いニーズに応じたビールを造るもので、醸造施設の整備、酒造免許取得などを経て、来年の大型連休明けごろの提供開始を目指す。
プロジェクトを立ち上げたのは、同市の京田西工業団地に酒田工場がある金属管製造などの「パイプ・ラインエンジニアリング」(東京都台東区)代表取締役の池田和男さん(58)、市内で飲食店「Ravi」「あぶり家ろわ蔵」を展開する合同会社イデアル代表社員の安藤力人さん(51)、美容室「waft hair&make」(新橋四丁目)を経営する勝田貴美さん(44)の3人。自らの店でクラフトビールを扱いたいと考えていた安藤さん、常連客でビール好きの勝田さんが長く温めていた企画で、同じく常連の池田さんに相談したところ、醸造設備製造事業への参入も視野に入れて快諾、用地と建屋、設備を提供することにした。
パイプ・ラインエンジニアリング酒田第三工場敷地内に約165平方メートル規模の醸造所を年内に新築、中に300―500リットルの醸造タンクを複数設置する。初年度は酒造免許取得に必要な6000リットルを醸造する予定で、将来的には原材料となる麦芽、ホップを自ら生産するとともに、小規模の醸造所、出来立てビールを提供するパブレストランを併設する「ブリューパブ」を中心市街地で展開する考えだ。
プロジェクト始動を受け4月26日、メンバーが酒田市役所を表敬訪問して丸山至市長と懇談。安藤さんは「ここ庄内地域に日本酒はもちろん、ワイン、ウイスキーの施設はあるが、ビール醸造施設はない。米やメロン、イチゴなど酒田の産物も用い、魅力あるビールを造りたい」と。これに対して丸山市長は「この地域はポテンシャルこそ高いが、それを現実の形にしてくれる人が少ない。『酒の酒田』をよりPRでき、ふるさと納税の返礼品としても期待できる」と述べた。
イデアルのスタッフでビール醸造を担当する堀明日美さん(31)が今後、先進地で研修を行うという。
2022年(令和4年) 5月8日(日)付紙面より
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日本のことを知り、広く発信できる「知日派国際人」の育成を目指す「KIP知日派国際人育成プログラム」(東京、パッカード啓子理事長)の地域研修が、5日まで2泊3日の日程で本県で行われた。一行13人は日程2日目の4日午後に酒田市を訪問、「食のサステナビリティ(持続性)」をテーマに地元高校生と議論を交わした。
KIPは2008年に設立し、10年に法人化。現在は首都圏在住の大学生、大学院生、若手社会人100人余が、各種社会問題を「自分事」として捉え、その解決策を模索している。例年、地域の現状と課題を学び、地域活性化策を提言することを目的に全国各地で研修を実施している。一行は3日午後に本県入り、天童市の担当者による農作物に関する講話を聴講した他、同市の出羽桜酒造を訪問した。
4日は羽黒山(鶴岡市)を参拝した後、酒田市役所で酒田の歴史・文化、食のサステナビリティに関する研修。丸山至市長が「ようこそ酒田へ。この研修を今後の人生の糧にして」と一行を歓迎した後、本間美術館事務長の清野誠さんが「北前船と酒田港」と題して基調講演した。
清野さんは、北前船がもたらしたモノとして▽交易を前提とした立地、まちのつくり▽広大な商家や豪壮な船主屋敷▽船乗りをもてなす料亭文化▽航海の安全を祈った神社・仏閣▽遠方に起源がある祭礼、節回しが似通った民謡―などを挙げた上で、「ニシン」を例に経済循環を紹介、「交易は、寄港地に富とにぎわいをもたらした」と述べ、富が集中した当時の酒田の繁栄ぶりを解説した。
酒田東高、酒田南高の生徒計16人との意見交換では、5班に分かれて「『食文化のサステナビリティ』から見た酒田の魅力と課題」のテーマで討議。今ある酒田の魅力的な食文化の持続性について共に考察。
一行は最終日、山居倉庫(国指定史跡)、即身仏を奉る海向寺、相馬樓など市内視察で見聞を広め、午後に帰京した。