2023年(令和5年) 8月6日(日)付紙面より
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江戸期に日本海、瀬戸内海を経て大阪に至る「西廻り航路」を確立した伊勢商人・河村瑞賢翁(1618―99年)が紡いだ縁をきっかけに酒田市は4日、瑞賢翁の出身地・三重県南伊勢町と文化交流協定を締結した。次代を担う子どもたちを中心とした市民・町民の相互訪問、歴史的なつながりを理解するための取り組みなど通して交流を深めていく。
江戸前期の寛文12(1672)年、瑞賢翁が出羽国の年貢米を大坂、江戸に運ぶため整備した西廻り航路は昨年、開設から350年を迎えた。江戸から明治期にかけて北海道、東北、北陸、西日本を結び津々浦々の人、物、文化が交差した同航路は海運に大変革をもたらし、その起点となった酒田湊は「西の堺、東の酒田」と称され、航路を活用した「北前船」の往来で繁栄した。
同市の日和山公園、同町の河村瑞賢公園には、いずれも同市千代田出身の彫刻家・高橋剛さん(1921―91年)による瑞賢翁の像が建つ。両市町は今回、共通の郷土の偉人である瑞賢翁の功績を広く住民に語り継いでいくとともに、共通の財産として強調した事業を継続して行い、相互に魅力向上を図ろうと、「河村瑞賢が紡いだ酒田市・南伊勢町の絆を未来につなぐ文化交流協定」を締結することにした。同市が文化交流協定を結ぶのは岩手県平泉町に次いで2カ所目、同町にとっては初という。
同市の日和山小幡楼和館2階で行われた締結式では、南伊勢町から上村久仁町長、掛橋靖町議会議長らが出席。高橋千代夫市議会議長、掛橋町議会議長らが見守る中、安川智之副市長と上村町長が「共有する歴史を礎とし、互いの歴史を学び、地域への愛着と誇りをもって交流を深め、未来に向け魅力あるまちづくりを推進」などとつづられた、同市出身の書道家・高田桂帆さん(広島県在住)が揮毫(きごう)した協定書を交わした。
安川副市長は「ようこそ酒田へ。なじみ深い人物を縁に協定を交わすことができうれしい。交流が末長く続くことを祈念する」、上村町長は「酒田は人情味にあふれる街という印象で、温かい歓迎に感謝。締結を機に、もう一段ギアを上げて親交を深めていきたい」とそれぞれあいさつ。掛橋議長は「瑞賢翁を通じた輪の広がりに期待する」と話した。