2024年(令和6年) 3月30日(土)付紙面より
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江戸時代に日本独自に栄えた数学「和算」、当時の数学者・愛好者が和算の問題を作ったり、解いたりしたものを絵馬のようにし神社仏閣に奉納、問題が解けたことを神仏に感謝し、より一層勉学に励むことを誓う「算額」。東北公益文科大学(酒田市、神田直弥学長)の教育プログラム「ジュニアドクター鳥海塾」の2期生、阿部哲奨(てっしょう)さん(15)=酒田四中3年=が制作した「算額」が、「第27回算額をつくろうコンクール」(和算を普及する会主催)で奨励賞、本年度ジュニアリサーチセッション(やまぐち共創大学コンソーシアム主催)で優秀賞をそれぞれ受けた。公益大が26日に発表した。
科学技術をけん引する人材育成を目的にした科学技術振興機構(JST)の支援制度「ジュニアドクター育成塾」に選定されている、ジュニアドクター鳥海塾は2021年開講。受講生はプログラミングの基礎知識を身に付けた後、神田学長はじめメディア情報コースの教員らによる講義で情報技術や心理学、観光、宇宙、数学、物理学など幅広い分野に関心を高めている。受講生は最大40人で、このうち優れた研究を展開する10人は2年目以降も活動を継続、学生と共に教員から専門演習(ゼミ)形式の講義を受けてさらなる高みを目指している。
「将来は数学の先生になりたい」と語る阿部さんは22年入塾の2期生で昨年春、第2段階に「進級」。本年度は「和算を通した数学問題作成方法の研究」をテーマに、山本裕樹公益大教授(物理学、天文学など)の指導でコンクール・セッション応募を目標として「和算」「算額」に関する知識を深め、江戸期に酒田の繁栄を支えた「北前船」をモチーフに、積める米俵と重石(バラスト)について問う「算額」を作成した。
普及する会は、和算の楽しさ、美しさを広く知ってもらい、数学文化の大切さが分かる社会の実現に寄与することを目的に2005年4月に設立したNPO法人。本部を都内に置き、児童・生徒を対象にした同コンクール、講演会など開催している。本年度の第27回コンクールには全国から1883点の応募があり、岡本和夫東京大名誉教授(数学)が審査、阿部さんの作品は金・銀・銅賞に次ぐ奨励賞17点のうち1点に選ばれた。
一方、いずれも山口県内の山口大、山口県立大、山口学芸大で組織するコンソーシアムは22年12月の設立。中高校生を対象にした本年度のセッションには全国から86件の応募があり、阿部さんは20日、山口大で開かれた発表会に出向き「算額」を披露。数学・情報分野で最優秀賞に次ぐ優秀賞を受けた。指導に当たった山本教授は「『数学をテーマにした研究をしたい』ということで昨年4月から指導してきた。高校生と比べても遜色ない発表だった。入賞できうれしく思う」と。間もなく県立酒田東高校に進学する阿部さんは「コンクール、セッションへの応募を一つの目標にしていた。酒田にちなんだ問題を作ることができ、それで入賞することができてうれしい」と話した。阿部さんによると、高校進学後も塾生として学びを深めるという。