2024年(令和6年) 4月18日(木)付紙面より
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山形市の東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターは、文化財の内部を立体的に観察できるエックス線CT撮影装置を導入した。国内の芸術系大学での導入は初。同大が行う鶴岡市の善寳寺五百羅漢像の修復プロジェクトや地域の文化財調査などに活用される。本格的な運用開始を前に16日、報道機関向けに装置が公開された。
同大がこれまで文化財調査で使っていたエックス線透過撮影装置の老朽化に伴い、導入した。対象物を回転させながらエックス線を照射して撮影し、モニター上で3D表示させた状態で内部観察ができる。平面で撮影していた従来の装置と比べ、技法や材質、劣化状態がより判別しやすくなり、精度の高い修復が可能になる。今回の導入で、善寳寺の五百羅漢像の頭部に打たれている彫刻の基準となる錐点(きりてん)の位置関係や深さなどが新たに分かったという。
この日、同センターで行われた内覧会で、五百羅漢像の修復に携わる同大の笹岡直美准教授は「錐点の位置が正確に分かったことは非常に大きな成果。修復に合わせて技法の調査にも取り組んでいきたい」と話した。
同大は2015年に善寳寺の五百羅漢像の修復プロジェクトをスタート。23年度末までに531体中144体の修復が完了している。本年度は10―15体を修復する予定。