2024年(令和6年) 5月5日(日)付紙面より
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鶴岡市山五十川の河内神社の春祭典が3日、同地区で行われた。地域に伝わる県指定無形民俗文化財の「山戸能」と「山五十川歌舞伎」が同神社境内の山五十川古典芸能伝承館で奉納上演され、大勢の見物客がステージ上で繰り広げられる伝統芸能を楽しんだ。
山戸能は能楽が伝えられた平安時代に始まったとされ、1964年に県の文化財指定を受けた。また、山五十川歌舞伎は300年ほど前の江戸中期、神楽に関連した村芝居として始まったとされ、86年に県の文化財指定を受けた。一つの地域に能と歌舞伎が伝えられているのは全国でも珍しく、現在は山五十川古典芸能保存会が継承と後継者育成に取り組んでいる。
能の上演は大小の鼓と太鼓で舞台を清める「座揃囃子」で始まり、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る「式三番」、漁夫の前で天女が美しい舞を披露する番能「羽衣」と続き、観客を幽玄の世界に引き込んだ。例年行われているあつみ小学校の児童による「恋慕の舞」は感染症の流行に配慮して今回は中止した。
続く歌舞伎の演目は、仮名手本忠臣蔵・大序「鶴ケ岡社頭兜改めの場」。鎌倉に鶴ケ岡八幡宮が造営され、足利直義が将軍尊氏の名代として新田義貞の遺品の兜(かぶと)を奉納しようとする中、高師直と桃井若狭之介安近のいさかいを巡る話で、せりふを決めた役者が見えを切ると観客が拍手と声援を送った。
会場では地元住民がにぎやかに酒を酌み交わし、大勢のアマチュアカメラマンが各演目を撮影。県外から鑑賞に訪れた人もおり、それぞれ連休終盤のイベントを思い思いに過ごしていた。