2006年(平成18年) 3月5日(日)付紙面より
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酒田市の中心市街地に残る町屋を生かし、地元の芸術家たちの絵画や書などを展示していこうというユニークな私設美術館が1日、同市相生町一丁目にオープンした。こけら落としの展示として、約400年前に作られた寛永雛(びな)など地元に伝わる雛人形、雛道具を展示している。
この私設美術館を開設したのは、元鶴岡養護学校長で酒田市文化財保護審議委員の工藤幸治さん(66)=酒田市若浜町=。
「あいおい工藤美術館」と命名された町屋は、ともに木造2階建ての母屋(1926年建築)と、棟続きの土蔵(1927年建築)で、延べ床面積は計約190平方メートル。母屋1階はふすまや障子を取り外すと1部屋のように使えることや、梁(はり)が大きく、吹き抜けの座敷の2階に採光用の窓があることなどが特徴。以前は質屋が営まれていた。
所有者が引っ越し、解体話が持ち上がったため、知り合いの工藤さんが「貴重な建物を後世に伝えたい」と以前から温めてきた私設美術館を実現する場として譲り受けた。
初の展示「春季展」は雛祭りの時期に合わせ、1日からスタート。工藤さんや親類が所蔵する、約400年前に作られた寛永雛の内裏1対をはじめ、大型の享保雛、江戸後期ごろの雛道具、合わせて約200点を床の間などに展示した。
2日午後は通りがかりの人などが次々に訪れ、貴重な雛人形とともに、「家の造りが懐かしい」など会場の雰囲気も楽しんでいた。
工藤さんは「新潟県村上市などで町屋を観光資源として宣伝しているが、酒田にも大火以前はたくさんあった。そうした歴史、文化を伝えるものとして残していきたい」と話している。
春季展は4月15日まで。開館時間は午前10時から午後5時まで。休館日は毎週月曜日で、夏場は週末のみの開館。受け付けボランティアへの謝礼に充てるため、入館料300円。1カ月から数カ月ごとに模様替えし、今後は古美術品のコレクターでもある工藤さんが所蔵する絵画や紅花染め、藍染め作品、地元の芸術家や工芸家の作品展などを開いていくという。
問い合わせは工藤さん=電090(2846)6846=へ。
私設美術館として再生した酒田市相生町一丁目の町屋