2006年(平成18年) 3月7日(火)付紙面より
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酒田市教育委員会は6日、今年で12回目を迎えた土門拳文化賞を、静岡県浜松市、浜松医科大名誉教授、山下昭さん(69)に贈ると発表した。受賞式は今月19日午前10時から酒田市の土門拳記念館で行われる。
この賞は、同市出身の世界的写真家・土門拳(1909―1990年)の功績を記念し、写真文化と写真芸術の振興、奨励を狙いに同記念館が開設10周年を迎えた1994年度に創設された。国内のアマチュア写真愛好者を対象に自由なテーマで写真作品を公募、優秀作を表彰している。
今回は全国32都道府県の111人から計117テーマの応募があり、長野重一さん、江成常夫さん、大西みつぐさんの写真家3人が選考委員となり文化賞1点、奨励賞3点を選んだ。
文化賞に選ばれた山下さんの作品は「ゆめの腕(かいな)に」(モノクロ30枚組)。先の大戦で特攻死した兄、わが子への愛惜を抱き続けて昨年亡くなった実母への追慕の思いを視覚化した作品。選考委員の講評では「作品群は単にアルバムに終わらず、叙事詩的な幅を持って迫ってくる。家族のリアルな人生劇が戦争の昭和と融合して稀有な秀作をつくり上げた」と評価された。
山下さんは「18歳の兄は母の温かい腕の中にもう一度帰りたいと切に願っていたに違いない。一連の写真は特攻死した兄と、戦後60年間待ち続け、昨年死去した母へ捧げる鎮魂のフォトメッセージ」との思いを込めたという。
奨励賞には、松本鶴子さん(61)=酒田市=の「黒森歌舞伎の記録」(カラー30枚組)、阿部千佳子さん(29)=神奈川県相模原市=の「種子(たね)の時間(とき)」(モノクロ30枚組)、東ひろみさん(38)=岐阜県美濃加茂市=の「ルーマニアン・ラプソディ」(カラー30枚組)が選ばれた。
受賞作品は19日から来月16日まで土門拳記念館、5月16日から同29日までは新宿ニコンサロン(東京都新宿区)に展示される。
山下さんの土門拳文化賞受賞作の一部