2007年(平成19年) 8月22日(水)付紙面より
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酒田市松山地域に伝わる「松山能」(県指定無形民俗文化財)が20日夜、同地域の神明神社境内の能楽堂で厳かに奉納上演され、観客を幽玄の世界に引き込んだ。
松山能は約300年前に江戸勤番の松山藩士が習得。明治維新後は民間の演能団体「松諷社(しょうふうしゃ)」(齋藤康二会長)に受け継がれてきた。同神社での奉納上演は「月の能」とも称され、「花の能」として6月に開催される「羽州庄内松山城薪能」、1月末に「雪の能」として行われる「まつやま大寒能」とともに3定期公演のうちのひとつ。
松山藩創立期の祈願所だった神明神社で毎年8月20日の例祭の夜、主に武人の霊を主人公に、戦いを題材とした「修羅物」と呼ばれる能を奉納上演している。
今年の演目は「屋島」。源義経の亡霊が前段は年老いた漁師、後段は華やかな軍装束で現れ、屋島を訪れた都の僧と問答するが、やがて夜が明けると、すべては僧の夢の中の出来事だったという物語。世阿弥の作で、修羅物の中でも屈指の名曲とされる。
同夜は南天に半月がかかり、「月の能」の風情がたっぷり。その中で午後7時半ごろ、能が始まった。観客は、うちわで風を送りながら鑑賞。約1時間の舞台を堪能していた。
能に先立ち、ともに松山小6年の本間愛弓さん(11)と斎藤恵梨さん(11)が、狂言「盆山(ぼんさん)」を見事に演じ、大きな拍手を受けた。
厳かに奉納上演された能「屋島」の一場面