2007年(平成19年) 8月22日(水)付紙面より
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県内の農林水産・食品加工分野における「高付加価値」の付与、食品加工産業の活性化を図ることを目的に、鶴岡市の慶応義塾大学先端生命科学研究所(先端研、冨田勝所長)と、食品製造・販売「日東ベスト」(寒河江市、内田淳社長)は、メタボローム(網羅的成分)測定技術を活用し県産農産物の機能性成分の探索・解析を行う「地域農産物健康機能解明プロジェクト」(仮称)を立ち上げることにした。先端研で20日、冨田所長と同社の鈴木俊幸会長らが会見し研究の目的や内容について述べた。
消費者の健康に対する意識が高まる中、体にとって有効な成分(機能性成分)を多く含む食材は、消費者によりアピールすることができるほか、近年の健康食ブームとあいまって大きな需要を生むと想定される。ここ数年では動脈硬化や脳梗塞(こうそく)を防ぐポリフェノール、血圧の上昇抑制に効果があるカテキン、視力改善に有効なアントシアニンなどが注目され、関連商品の流通が活発化した。
県産農産物にこのような付加価値を付けることによって、より消費者にアピールできるほか、機能性成分を発見できた場合、落果などが原因で食用にならないものでも有効利用が可能になることから今回、先端研と同社はプロジェクトを立ち上げ、機能性成分の探索・解析を行うことにした。
具体的な研究の内容は、先端研が開発した「キャピラリー電気泳動」「質量分析計」から成るメタボローム測定技術を駆使して農産物に含まれる機能性成分を一斉分析、人体にとって良い成分をより多く含む農産物を探索する。
同社では探索したものを同じような成分に区分け、ある程度まとまった量を生産する。また、機能性成分が含まれていれば、天候不順などによる未熟なもの、落果したものなど、これまで市場に流通せず廃棄されてきたものでも新たな商品価値を見出すことができることから、有効な成分を残しながら再加工し、消費者にアピールできるような商品化を目指す。
先端研によると、旬の食材を使用するため解析に1年、動物実験などに2年、商品化までにさらに1年ほどの期間を要するという。まずはラ・フランスやサクランボ、庄内メロン、タラノメなど10品目の探索・解析を予定している。
会見では、先端研から冨田所長と曽我朋義教授、同社から鈴木会長、研究部・試作開発部など管掌取締役・榎森正浩さんの計4人が出席。冨田所長が「メタボローム測定技術を食品に応用するのは夢だった。これまで知られていなかった機能性成分が明らかになる可能性もあるかも」、鈴木会長が「このプロジェクトを利用していろいろな情報を得たい」とそれぞれあいさつした。今後、連携協力にかかわる協定を締結しプロジェクトがスタートする。
握手を交わす冨田所長(右)と鈴木会長