2010年(平成22年) 4月30日(金)付紙面より
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鶴岡市湯田川の鶴岡市農協直売施設で29日、特産の「湯田川孟宗(もうそう)」の直売が始まった。4月に入っても気温が上がらなかった影響で平年に比べて数は出なかったものの、待ちわびたファンたちが列をつくり、朝掘りの新鮮な孟宗を買い求めた。
湯田川地区は粘土質の赤土が孟宗の栽培に適しており、生産者のきめ細かな管理で柔らかくえぐみの少ない良質の孟宗が収穫され、県内外に知られている。
直売所は同農協湯田川孟宗部会(大井孝雄会長)が毎年、旬を迎えるこの時期に開設。今年は61人が会員として登録しており、新鮮な「朝掘り」にこだわって出荷する。
同部会によると、今シーズンは4月の低温の影響で生育が1週間から10日ほど遅れており、直売所開設も昨年より3日遅れ。午前6時半ごろから生産者が掘りたてを持ち込み、例年より少なめの計約40キロで“店開き”となった。
大きさはL、M、S、2Sの4種類。初日はLとMはごくわずかで、Sと2Sが大半を占めた。開店の午前6時45分には約20人が並び2キロ、3キロと買い求めた。先頭に並んだ鶴岡市新形町の70代主婦は「毎年待ちに待って初日に買いに来る。小さいものが好きで今日は手ごろな大きさの孟宗が手に入った。孟宗汁にして食べる」と笑顔を見せていた。
同部会は「人気が高いMサイズは連休中に出始め、販売のピークは来月10日ごろ。今年は気温が上がって孟宗が一斉に出ると、一気に収穫が終わる可能性もある」と話している。直売は来月いっぱいを予定しており、毎朝午前6時45分に開店する。料金はそれぞれ1キロ単位でLが800円、M700円、S600円、2S500円。
2010年(平成22年) 4月30日(金)付紙面より
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鶴岡市が鶴岡公園内に整備した「鶴岡市立藤沢周平記念館」が29日、開館した。地元をはじめ県内外から多くの藤沢文学ファンが訪れ、同市出身の作家・藤沢周平氏の人柄や業績を紹介した展示資料に見入った。東京にあった自宅の一部を移築、再現した書斎に来館者たちは「今にも藤沢さんが戻ってきて原稿を書き出しそう」と話しながら、小説の名手と言われた藤沢氏の作品世界に触れていた。
記念館は、1997年1月に死去した藤沢氏の業績と貴重な文学資料を後世に残し、作品の源となった鶴岡・庄内の文化、風土の中で「藤沢文学」を深く味わえる施設を目指し、市が2005年度から整備構想を進めた。
遺族の協力で、藤沢氏が20年間住んだ東京都練馬区の自宅2階の書斎を再現し、直筆原稿や創作メモ、鶴岡・庄内とのつながりを示す写真や資料、初版単行本全74冊などを3部構成の常設展示と企画展示で紹介。テーマを決めて作品世界を深く掘り下げる企画展の初回は、人気作品の「蝉しぐれ」を取り上げた。
この日、午前9時の開館に先立ち、記念館玄関前でセレモニーがあり、榎本政規市長が「藤沢さんが作品に込めた気持ちをくみ取ってもらい、それぞれの藤沢ワールドをつくってもらえれば。庄内すべてが藤沢文学のフィールド」、藤沢氏の長女・遠藤展子(のぶこ)さんは「藤沢文学に触れ、父が生まれ育った鶴岡の良さを伝え、心が温かくなり、来館者から喜んでもらい愛される記念館となるよう協力していきたい」とあいさつ。桜吹雪の中、同市芸術文化協会の山崎誠助会長らとともにテープカットで開館を告げた。
オープンから1時間で約200人が入館。1番乗りとなった埼玉県鴻巣市の田中射水さん(24)は「大ファンで全作品を3回は読んでいる。初めて直筆原稿を見て、丸くてかわいらしい文字を書くことを知ったし、地元の教え子の方から教師時代の藤沢さんの話を聞けてとても感動した」と興奮気味に話した。夜行バスで訪れた東京板橋区の宮崎弘子さん(56)は「どうしても開館の日に来たかった。書斎を見ていると、今にも藤沢さんが入ってきそうな感じ。何度でも来ます」と話した。地元の藤島地域から訪れた小野木文子さん(67)と萬年裕子さん(56)は「落ち着いた雰囲気の記念館で、以前から鶴岡公園にあった感じがする。後日、ゆっくりと見学に来ます」と話していた。
「開館の日に訪れてくれた人たちへのサプライズ」(榎本市長)で、開館初日のこの日だけは入館無料となった。