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2011年(平成23年) 5月13日(金)付紙面より

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森の時間40 ―山形大学農学部からみなさまへ―

森と湖の国フィンランドの国立公園を歩く 平  智

 フィンランドと聞くとみなさんは何を思い浮かべるでしょうか。サンタクロース? それともオーロラでしょうか。どちらも有名ですが、今日はフィンランドの森の話をしたいと思います。

 フィンランドといえば森と湖の国。フィンランド語の国名「スオミ」は「湖の国」という意味で、今から約2万5000年前の氷河期にできたとされる大小さまざまな湖は全部で約18万もあるといわれています。

 フィンランドの国土の面積は日本の約9割。湖と川が全体の約1割を占め、残りの陸地部分の約8割は森です。人口は5百万人とちょっとですから日本の約20分の1にしか過ぎません。トナカイの数の方が人口より多いといわれているほどです。

 フィンランドは寒冷地なので、森に育つ木の種類は限られています。トウヒとアカマツとシラカバの3種類がほとんどで、ほかにモミやナナカマドが少しある程度です。

 気温が低いので、あまり標高が高くないところでもそれ以上高いところにはもう木が生えない、いわゆる「森林限界」が訪れます。北極圏の近くあたりまで行くと、なだらかな丘陵地のようなところでもすぐに森林限界に達して、木々が小さく、か弱くなります。また、太陽の光が真上からではなく斜めから当たる時間が長いので、木がかなり密集していても幹の低い部分からけっこうたくさんの枝が出ます。

 このように、フィンランドは森の木たちにとってかなり過酷な生活環境といえますが、生産される木材は年輪が詰まった、緻密で頑丈なよい品質のものだそうです。

 首都ヘルシンキの西方約35キロのところにあるヌークシオ国立公園。10月に入って、ちょうど「ルスカ」のシーズンを迎えていました。「ルスカ」は「黄葉」を現すフィンランド語です。フィンランドの秋はシラカバの黄葉が実に見事で、夕日を浴びて黄金色に光り輝く姿はずっと忘れることができません。

 公園内の7キロほどのコースを散策しました。足元にはトナカイの好物でもある「はなごけ」(地衣類の一種)が一面に見られます。また、森の中のあちこちに岩盤が顔を出していて、この国が大きな岩盤の上に乗っかっていることも実感されます。岩がかたくて根が地中深く入りにくいために風で倒れたと思われる木も散見されます。

 トウヒ、アカマツ、モミ、シラカバ…。単調な風景と高低差のない道。人にもあまり出会いません。どちらかといえば歩く楽しさよりもさみしさやわびしさを感じる道行きです。

 と、そのとき、ふいに視界が開けました。「あっ、湖!」豊かにたたえられた水。対岸の森をくっきりと映し出す水面。なんともいえない安心感と充実感。「そうか! フィンランドの森歩きは湖に出会うための森歩きなんだ」と、一人で勝手に納得したのでした。

(山形大学農学部教授、専門は園芸学および人間・植物関係学)

森と湖の国フィンランド。ヌークシオ国立公園にて (2010年10月8日撮影)
森と湖の国フィンランド。ヌークシオ国立公園にて (2010年10月8日撮影)



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