2014年(平成26年) 4月23日(水)付紙面より
ツイート
酒田市平田地域の温泉施設「アイアイひらた」に通じる市道そばに立つアカマツの大木「いきかえりの松」が22日、切り倒された。松くい虫に侵されて枯れる寸前だったこの松を、周辺に広がる「悠々の杜(もり)」のシンボル樹として再生させようと地元のNPO法人「ひらた里山の会」(佐藤忠智理事長)が昨秋から、下草を刈り肥料を施すなど熱心に再生作業を進めたものの及ばず、完全に枯れて倒れる恐れが出てきたためやむを得ず伐採した。
この松は戦後間もなく、近くにあった採油施設を閉鎖する際、地元住民が記念に植えた。高さ約30メートル、幹周り4メートルほどに成長。しかし近年、松くい虫のためにかなりの部分が枯れてきたことから「里山の会」が昨年10月、かつての雄姿を取り戻し、自然の大切さ、美しさのシンボルとすることで周辺整備にも関心を持ってもらおうと、「アイアイひらた」への「行き帰り」に仰ぎ見ることと松そのものの「生き返り」の願いを込めて「いきかえりの松」と名付け、再生計画を立てた。
市内の樹木医や県庄内総合支庁の森林整備担当職員らに診断を依頼。再生手段をアドバイスしてもらい、下草刈りやつる払いを行う一方、根周りに堆肥や竹炭などを投入し、枯れ枝の切断と消毒薬を散布するといった一連の作業を行った。趣旨に賛同した平田地域の会社員ら約30人がボランティア参加した。
しかし、松くい虫被害が予想以上に進行していた上、昨夏の少雨が決定的なダメージを与えたとみられ、一部に残っていた緑の葉も今春には茶褐色に変わってしまうなど、全体が枯死した状態に。そこで倒れることによる危険を未然に防ぐため、市の委託を受けた「里山の会」が市内の木材業者に依頼して伐採することにした。
この日は午前8時すぎに作業開始。道路側に倒れないよう反対側の杉とワイヤーロープで結んでからチェーンソーで切り込みを入れた。ジャッキでゆっくりとロープを引くと、松は「バキッバキッ」という大きな音を発しながら倒れ、約70年の命を終えた。業者によると、松は直ちにチップなどに加工され再利用されるという。作業を見守った佐藤理事長は「何とか元気になってほしいと願っていたが…。残念のひと言」と肩を落として感想。その上で、「再利用されることもあり、私たちの心の中で生き続ける」と話していた。