2016年(平成28年) 6月14日(火)付紙面より
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鶴岡市にある国指定重要文化財「旧風間家住宅丙申堂」で12日、創建120周年を記念した講演会が開かれ、同市出身の作家・藤沢周平さん原作の映画「蝉しぐれ」の黒土三男監督の講演と同映画に出演した俳優をゲストに迎えたトークが行われた。黒土さんは「今度は鶴岡で藤沢さんの『用心棒日月抄』を撮りたい。できれば10作ぐらいのシリーズにしたい」と語った。
映画「蝉しぐれ」は庄内地方を中心に撮影が行われ、2005年に全国公開された。丙申堂の小座敷では、ラストシーンで主人公の牧文四郎と、おふくが互いの秘めた思いを伝え合う重要な場面が撮影されている。
「丙申堂と私」と題して講演した黒土さんは、「藤沢さんは蝉しぐれで日本人の美意識、恥じらい、日本人はどうあるべきかを書きたかったのでは。丙申堂は日本の伝統建築の美しさを持っている。その美しさに無意識のうちに引かれ、ここで2人のシーンを撮った。あのシーンを撮影でき本当に良かった」と話し、映画と丙申堂でのエピソードを紹介。「用心棒日月抄の脚本はできている。本物の日本人の映画をまた撮りたい。皆さんの協力をお願いします」と呼び掛けた。
引き続き、映画「蝉しぐれ」で文四郎の少年時代を演じた俳優の石田卓也さんと、おふくの少女時代を演じた女優の佐津川愛美さんを交えたトークが行われた。
石田さんは「脚本の最初の本読みで『おはよう』のせりふを何百回も言わせられた。監督には怒られてばかりで、撮影が終わった後は顔も見たくないと思った」とジョークを交えて語り、佐津川さんは「怒られながら2人で頑張った。それが映画の中の文四郎とふくの絆にもつながったのでは」と撮影秘話を披露していた。講演会は丙申堂を管理する公益財団法人克念社が主催し、約100人が参加した。