2016年(平成28年) 6月28日(火)付紙面より
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映画「おくりびと」のロケ地として知られる酒田市日吉町二丁目の「旧割烹(かっぽう)小幡」の利活用を検討するワークショップが25日、現地の見学会で始まった。公募市民14人が8月ごろまで計4回程度の集まりで、旧小幡を含む日和山周辺の観光施設の在り方について、意見を述べていく。
旧小幡は、酒田港本港を見下ろす日和山の頂上に1876(明治9)年に開業。割烹料理店やダンスホールなどとして活用されたが、1998年に廃業した。現在は、明治期に建てられた2階建ての和風建築と、昭和初期に建てられた3階建て洋館の棟続きの2棟が残っている。2009年に米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」では、主人公が勤める葬儀社「NKエージェント」の社屋として使われ、脚光を浴びた。同年4月から洋館の内部を公開。しかし、老朽化が著しく、ブームも下火になった14年3月に公開をやめた。建物は市の所有となっている。
この建物について市民の間には、日本で初めてアカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品の代表的なロケ地、酒田の料亭文化を象徴する文化財などとして保存を求める声がある。一方で、老朽化が著しく保存・修理に相当の費用が掛かることや、酒田港を見下ろす「酒田観光のへそ」という立地もあり、解体して周辺を含め新たな観光拠点を整備すべきなど、さまざまな意見があるという。
利活用検討ワークショップはそうした現状を踏まえ、丸山至市政が推進する「市政への積極的な市民参画」の一環で市が本年度、市民を公募して開催。旧小幡を含む日和山周辺の観光施設の課題と将来展望への意見を聞く。4―9月に景観づくりの観点から並行して進めている日和山のまち並みワークショップと連携し、市が来年度から具体的な事業に入るための参考にする。
この日は、具体的な意見交換に入る第1回ワークショップ(今月30日)を前に、現地を知っておく事前見学会。参加市民たちが市観光振興課職員の案内で、旧小幡内部や周辺の日和山周辺の観光施設を巡った。
同課では「諮問機関ではないので、一つの意見に集約するわけでなく、市民に自由に意見を述べてもらい、参考にする。旧小幡だけでなく、日和山周辺全体の観光をどうするかという大きな観点から意見を聞き、その中で旧小幡の方向性も見据えていく」としている。