2017年(平成29年) 5月5日(金)付紙面より
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鶴岡市山五十川の河内神社で3日、例祭の「春祭典」が行われた。同地区に伝わる「山戸能」と「山五十川歌舞伎」(いずれも県指定無形民俗文化財)が、同神社境内の古典芸能伝承館で奉納上演され、地元の子どもや青年が熱演した。
山戸能は平安時代初期、能楽に堪能な人が始め、その後鶴岡市黒川地区から移住した人たちが多くの演目を伝えたとされる。また、山五十川歌舞伎は江戸時代中期、神事に伴う村芝居として始まったという。
現在は山五十川古典芸能保存会の下、山戸能一座(三浦市樹座長)と山五十川歌舞伎一座(尾上菊之丞座長)がそれぞれ伝承している。一つの集落で能と歌舞伎の両方が伝承されているのは全国でもまれで、能は1976年、歌舞伎は86年にそれぞれ県の文化財に指定された。
今回の演目は、能が稚児舞の「恋慕の舞」、翁や三番叟、子どもが演じる千歳が登場して天下太平や五穀豊穣(ほうじょう)を祈る「式三番」、春日明神を参詣する途中に明恵上人が八大龍王と出会う番能「春日龍神」が披露された。歌舞伎は「仮名手本忠臣蔵『大序 鶴ケ岡社頭兜改めの場』(つるがおかしゃとうかぶとあらためのば)」が上演された。
役者がせりふを決め、見えを切ると地元住民たちから「いいぞ」「頑張れ」と声援が飛び、地区内外から訪れた観客たちは春祭りの明るい雰囲気の中で演じられる各演目を楽しんでいた。友人と一緒に観賞した鶴岡市内の70代女性は「初めて見に来た。役者たちの熱演が素晴らしくて楽しめた」と話していた。