2017年(平成29年) 9月13日(水)付紙面より
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鶴岡市の鶴岡工業高校(阿部進校長、生徒577人)情報通信科の女子生徒4人が、米国在住の視覚障害者から依頼を受け、「触れる日本地図」を3Dプリンターで作成した。都道府県の境界を立体的に作り、位置関係が触って分かるようになっているもの。10日、同校で生徒と依頼者側とのテレビ電話会談が行われ、出来上がった地図を前に懇談した。
本県では、産学官連携の「やまがたメイカーズネットワーク」(YMN)が、県内にある小中高の学校と特別支援学校を含む約100校を対象に「教育用3Dプリンター導入プロジェクト」を2014年から展開。各学校では教材としての活用などさまざまな取り組みが行われている。
こうした活動の新聞報道をインターネットで知った米カリフォルニア在住の関谷洋子さん(67)がYMN側にメールで「視覚障害者の夫にも分かる日本地図を作ってもらえないか」と今年4月に依頼。YMNで導入プロジェクトのリーダーを務めた同校情報通信科の齋藤秀志教諭(46)を通して、いずれも情報通信科3年でロボティクスクラブ所属の五戸菜摘さん(17)、真島凜さん(18)、後藤百恵さん(17)、佐藤るりさん(18)の4人チームが触れる日本地図作成に取り組むことになった。
4人は3Dプリンター関連のほか、山形盲学校や特別支援学校の教諭らとの情報交換などで視覚障害者の学習特性についても理解を深めながら約5カ月間かけて制作。白地図を基に、一から3Dデータを作成した。
地図は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の八地方区分で分けた縦横20センチと、各都道府県で分けた縦横50センチの2パターンを制作。触って分かるように約0・3ミリの厚みを持たせた。
10日のテレビ電話会談では、洋子さんと、夫で10年ほど前に視力を失ったという関谷照夫さん(67)が出席。妻から出来上がった地図の様子を伝えてもらった照夫さんは「日本に帰った時にこうした地図を探していたがなかった。地図を触りながら、好きな日本の歴史にも思いをはせたい」と感謝の言葉。チームを代表して五戸さんは「時間がかかった分、喜んでもらってよかった。きれいに最終仕上げをして渡したい」と笑顔で話した。
作成した地図は10月末ごろに関谷さん夫妻が日本へ来た際に直接手渡しする予定。3Dデータも今後公開するという。