2018年(平成30年) 3月2日(金)付紙面より
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鶴岡工業高校3年の小野寺拓さん(18)が、3Dプリンターなどを活用し、自分用の電動義手を作製した。一般的な電動義手の販売価格は50万円以上と高価だが、小野寺さんは1―2万円の費用に抑えた。「電動義手は高価なこともあり、無縁と思っていた。障害のある他の人にも広く知ってもらいたい」と話している。
小野寺さんは左手に先天性の障害がある。学校給食の配膳など両手を使う作業は難しく、家に帰ってから両親から練習に付き合ってもらうなど、陰の努力もあったという。「小さい頃、他の人と違うとは感じていた。周りの人たちから助けられた感謝の思い出の方が多い」と振り返る。
高校卒業後の自立を見据えて鶴岡工業高へ進学。3年生の春、出会いがあった。同校へ赴任した齋藤秀志教諭から「自分で義手を作ってみないか」と誘われた。齋藤教諭は、産学官連携の「やまがたメイカーズネットワーク」(YMN)の事業で、県内にある小中高の学校と特別支援学校を対象とした教育用3Dプリンター導入プロジェクトに関わっていた。
「3Dプリンターによって安価に製作できると知り、一気に近い存在になった」と、5月に齋藤教諭の指導するロボティクスクラブに入部。プリンターの基本的な操作方法を学びながら、ウェブ上で公開されていた右手用の義手3Dデータを自分用に加工。指などを動かすきっかけとなるセンサーや駆動機構などを試行錯誤し、「3号機」が2月上旬に完成した。齋藤教諭を通じて義手普及に取り組むNPOや、山形大工学部などからも情報や機材提供などで協力を得たという。
完成した3号機は、3Dプリンターで出力した約50のパーツと、サーボモーター3つ、電子基盤4つで構成。腕の筋肉が盛り上がる圧力をセンサーで拾い、親指、人さし指、中指―小指の計3カ所を動かせる。物をつまむ動きが得意で、ハンダごてを持ってハンダ付け作業もできる。「就職活動も行いながらで忙しかったが、何とか形にすることができた。ものづくりは一人ではできないと実感。協力してくれた方々に感謝」。
高校卒業後は鉄道会社へ就職する。「筋電センサーで動かすなど、改良の余地はまだまだある。就職後も個人的に改良を続け、より良いものを作りたい」と話している。