2018年(平成30年) 6月13日(水)付紙面より
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山形在来作物研究会(会長・江頭宏昌山形大農学部教授)が2016、17年度に実施した調査で、鶴岡市内で確認される在来作物が06年度の前回調査より12品目増え60品目に上ることが分かった。在来作物に対する認知度の向上で前回比14品目増えたものの、逆に2品目は後継者がおらず栽培が確認できないなどの理由でリストから除外された。調査報告は今後の課題として、後継者による栽培の継承、生産者と消費者が結び付く流通の在り方、加工業者の確保などを指摘している。
同研究会は在来作物を「特定の地域で世代を超えて自家採種するなど種苗管理しながら栽培を続け、生活に利用してきた野菜や穀物、果樹、花の作物」と定義している。
今回の調査で新たに在来作物と確認したのは、堅苔沢地区で100年以上前から栽培される自家用の「波渡ナス」、越沢地区に百数十年前に伝えられたとみられ、甘い香りが特徴の「三角ソバ」、湯田川地区の1軒で受け継がれてきた大型ナスの「萬吉ナス」、黒川地区の1軒で栽培され、黒川能の行事に使用されているヤナギタデなど14品目。前回調査で確認された「白山ホオズキ」とツルナの一種「イソガキ」は栽培が確認できなかったため消失とされた。
同研究会が確認している県内の在来作物は179品目あり、このうち庄内地域は半数の87品目、鶴岡市が全体の3分の1の60品目を占める。江頭会長は「イネの民間育種も含め庄内地域は、経済的な側面とは別の価値観から、伝統的に良いものを残すという土壌が根深くある。在来作物が多く残るのもこうした背景で、良いもの、おいしいものを愛して楽しむという風土があるため」と分析する。
そうした中でも継承への課題は多く、江頭会長は「おいしさを楽しむという文化を大切にしつつ、料理店や観光拠点と連携し、現代の価値観にマッチした提供の仕方を工夫することも大切。在来作物を栽培したいという若い生産者も少なくなく、伝統的な種取り文化を残すことが、鶴岡の食文化を守ることにもつながる」と提言した。
前回調査は、同市が14年12月にユネスコの食文化創造都市に加盟認定された際、基礎的な資料として活用された。今回の調査はユネスコに4年ごとに提出するモニタリング報告の基礎資料となる。