2019年(令和1年) 8月15日(木)付紙面より
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酒田市黒森地区に伝わる「黒森歌舞伎」(県指定無形民俗文化財)の夏芝居が13日夕、地区の黒森日枝神社演舞場で行われた。11月に初の海外公演としてポーランドに出向くため、その時に演じる「義経千本桜 伏見稲荷鳥居前の場」を事前にお披露目した。大勢の家族連れらが、通常は2月の厳寒期に屋外で鑑賞する「雪中芝居」を、浴衣姿や扇子片手に楽しんだ。
約280年前の江戸・享保年間(1716―35年)から伝わる農民芸能で、地元住民による「妻堂連中」(冨樫久一座長)が継承している。日本文化研究家でアダム・ミツキェヴィチ大(ポーランド・ボズナン市)助教授のイガ・ルトコフスカさんの仲介で、ポーランド・日本国交樹立100周年の今年11月、日本の約170の地芝居を代表して同国を訪れ、首都ワルシャワなどで公演してくる。
夏芝居は、神社の創建周年や花道改修記念など節目に不定期に行っており、今回は歌舞伎発祥280年を記念して行った2015年以来、4年ぶり。お盆に行っている地区の夏祭りに合わせて実施した。
幕開けに先立ち、冨樫座長と、この公演のため家族で来日したイガさんが舞台あいさつ。冨樫座長は「300年近く続いているのは、多くの先輩が支えてくれたから。これからずっと続けるためにも、ポーランド公演を成功させたい」と抱負。イガさんは「2010年に初めて黒森に来て、伝統が印象的で、ぜひポーランド人に見せたいと思っていた。皆さんのおかげで実現する」と感謝を述べた。
幕が開き、花道から源義経や静御前、弁慶らが次々に登場すると、会場からは大きな拍手が湧いた。せみ時雨が響く宵闇の中、浴衣姿の観客らは扇子やうちわを手に、生ビールのグラスを傾けながら芝居を楽しんでいた。