2020年(令和2年) 6月2日(火)付紙面より
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鶴岡工業高等専門学校(高橋幸司校長)創造工学科情報コースの金帝演准教授(47)と学生たちが、1地点の温度や湿度などの気象情報を提供するシステム「ウェザーステーション」の開発に取り組んでいる。市販品が100万円超など高額なのに対し、精度は落ちるが、5万円程度と格安で作れることから、金准教授は「地元農業の多くの分野で活用できるのでは」と夢を膨らませている。
金准教授の専門は、自動車の安全運転を支援する位置特定など、センサーを通じて情報を計測・数値化するセンシング技術。2013年に鶴岡高専に赴任して以来、地元の基幹産業である農業への応用に関心を持ち、ドローンを使って気象情報を得る手法などを研究。19年1月ごろからは、ともに現・専攻科1年の佐藤大地さん(21)、齋藤大輝さん(20)の学生2人と共に、「KOSEN版ウェザーステーション」の開発に取り組んでいる。
KOSEN版は、市販のセンサーなど安価な部品を使い、実用に耐えるものを目指している。温度、湿度、日射量、気圧、風速、風向、雨量の7項目を測定し、それらの情報をパソコンやスマートフォンなどを通じ、いつでも確認できる。さらに、例えば気温などが一定値を越えると、「LINE」を通じてアラート(警報)が鳴るように設定することができる。製作費は本体だけで約5万円、電源用の太陽光発電パネルを付けると約7万5000円。金准教授の指導の下、主に本体の回路設計や組み立てを佐藤さん、サーバー管理やオンライン上の問題を齋藤さんが担当している。
2019年3月からは三川町横山のJA全農山形庄内農機センター内の水稲の育苗ハウス7棟に各1台、同10月からは東根市神町のサクランボ畑に1台の計8台を設置し、耐久性や性能の実証試験を行っている。
これまでのところ、高専屋上に設置した高精度の市販品に比べ、雨量の精度はまだ低く、課題が残るが、温度や湿度は市販品に近く、地温などのアラートもうまく機能するという。
金准教授は「ウェザーステーションは、少しの気象変化が収益を大きく左右する高付加価値の作物、例えばサクランボやメロンなどでは比較的導入しやすい」という。また、「農業の後継者不足の要因には、農作業を長年の経験や勘などの感覚に頼っていることがあると思う。感覚頼りの面を見える化することで、効率的で、若者にも分かりやすい農業になる。KOSEN版も、そうした農業の可能性を高める技術として進化させていきたい」と話す。
今後は精度をより高め、作物の収量と気象データの相関をどこまで追究できるかなど、研究を深める。超音波を使い、作物の生長具合や水田の水位把握などの応用も考えている。市販の予定はないが、希望者には可能な範囲で試作品を提供するという。問い合わせは金准教授=電0235(25)9038=へ。
2020年(令和2年) 6月2日(火)付紙面より
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庄内浜を代表する初夏の味覚・岩ガキの素潜り漁が31日、庄内沿岸の5海域で解禁。各地の漁港では朝から地元漁師が漁に繰り出した。
県漁業協同組合(酒田市、本間昭志代表理事組合長)は毎年5月中旬まで出荷を自主規制しており、水質検査などの結果を受け漁を解禁している。支所・出張所による吹浦と酒田、由良、豊浦、温海5海域で安全性が確認されたことから29日、31日からの採取を解禁した。
このうち鳥海山から注ぐ清流や伏流水で岩ガキの育ちが良いことで知られる遊佐町の吹浦漁港からはこの日、くっきりと姿を現した鳥海山に見守られ、5隻が出漁。第三栄祥丸の土門拓也船長(46)は午前7時半に出航し、約3時間にわたって次々と採取した。
帰港後は出荷に向けた準備作業。包丁などを使用して殻に付いた海藻をはがす「カキたたき」を繰り返していた。土門船長は「身の入りはかなり良い。新型コロナウイルス感染症の影響で海産物の需要が減っているが、より多くの人から味わってもらいたい」と話した。残る鼠ケ関、加茂両海域とも安全性が確認され次第、採捕が可能となる。岩ガキ漁は8月いっぱい行われるという。