2021年(令和3年) 4月11日(日)付紙面より
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鶴岡市立加茂水族館(奥泉和也館長)で、国内で初となる「ナデシコクラゲ」(仮称)が展示されている。岩手県沖の水深約1100メートルの深海の空き缶から見つかったポリプ(クラゲを生み出す固着性の形態)から育てられたもので、飼育担当者は「人工物と生物の関係を考える上でも重要」としている。
このクラゲのポリプは2012年3月、北里大海洋生命科学部の三宅裕志准教授らの研究グループが、岩手県山田町沖で海洋研究開発機構の無人潜水機「かいこう」などを使い、海底ごみが海洋生物に与える影響を研究するために潜水調査した際、水深1127メートルにあった空き缶から見つかった。餌を与えて育て、遺伝子解析したところ、国内では見つかっていないクラゲだった。
学名は「Earleria purpurea(エアレリア パープレア)」。標準和名はないが、口唇部が紫の花のような形であることから、三宅准教授が「ナデシコクラゲ」と仮に名付けた。海洋生命科学部のミニ水族館「北里アクアリウムラボ」(神奈川県相模原市)のほか、クラゲの飼育研究が世界トップクラスとして加茂水族館と新江ノ島水族館(同県藤沢市)にポリプとクラゲを分けてもらい、今月6日から同時に公開している。
加茂水族館には今年1月20日にポリプとクラゲが届き、館内で生まれた個体を含め約30匹を展示した。大きさは直径約5ミリから約2・5センチで、大きな個体は紫の花のような口唇がはっきりと分かる。
飼育課の佐藤智佳さんは「小さいが、特徴である紫の花のような口唇をじっくり見てほしい。また、クラゲが増えるにはポリプが付着する場所が必要で、今回は水深1100メートルの海底のごみがそういう場になっていた。人工物は海を汚す面もあるが、それをよりどころにしている生物もあり、生命のたくましさなど考えさせられることが多い」としている。
今後、常設展示する。ポリプを育てれば、クラゲを増やすことができるという。
2021年(令和3年) 4月11日(日)付紙面より
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鶴岡市湯田川のJA鶴岡湯田川催芽場で、温泉の湯を使った稲の芽出し作業が最盛期を迎えている。庄内一円と新潟県・山北地区の農家から運び込まれた種もみを湯に浸して発芽を促す。江戸末期から続く伝統の春作業だ。
温泉の廃湯を活用した発芽法は、1848(嘉永元)年に地元の大井多右衛門が考案し普及させたと伝わる。8キロほどの種もみを入れた袋を30―32度の湯に12時間浸した後、廃湯水路の上に敷いた枕木に袋を並べてむしろで覆い、さらに12時間蒸して発芽を促進させるもの。
専用機器を使った芽出しに比べコストが安く、しかも発芽が均一になり苗作りが楽になるといったメリットがあり、今季も約1000戸の農家から、つや姫、はえぬき、雪若丸、ひとめぼれ、あきたこまちなどの品種が240トン近く運び込まれる。
作業は今月1日に始まり、今がピークで催芽場は種もみの袋でいっぱい。作業員は早朝5時から交代制で一日26トン前後の漬け込みに追われている。9日午後は15人が作業に当たり、流れ作業で次々と種もみの袋を漬けていた。催芽場の周囲では桜が満開で、梅とコブシも咲きそろう。
担当の丸山健さん(55)は「今年は桜の開花が早く、芽出しの最盛期の作業を満開の桜の下でするのは珍しい。気温と湯温のバランスを見ながらの作業です」と話していた。湯田川温泉の芽出し作業は今月下旬まで続く。