2022年(令和4年) 6月16日(木)付紙面より
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豪華な舞台
酒井家庄内入部400年を記念した「宝生流能楽公演」の本公演が14日、鶴岡市の荘銀タクト鶴岡(市文化会館)で開かれた。ともに人間国宝の野村万作さん(狂言方和泉流)と大倉源次郎さん(小鼓方大倉流宗家)の能楽界の大御所をはじめ、能楽流派・宝生流第20代宗家の宝生和英(かずふさ)さんらが出演し、祝賀能として舞囃子「高砂」、狂言「末広かり(すえひろがり)」、能「石橋(しゃっきょう)」の豪華な舞台を繰り広げた。
荘銀タクト鶴岡「観客と一体」に
能楽は江戸時代に武家の式楽(儀式用の公式な芸能)とされ、旧庄内藩主酒井家には代々宝生流能楽師の三川家が指南役として仕えていた。公演は酒井家と宝生流の歴史的な縁を基に、公益財団法人庄内能楽館(酒田市浜松町、池田宏理事長)が主催し、市教育委員会、荘内神社が共催。荘内日報社などが後援した。
「末広かり」では万作さん、息子の萬斎さん、孫の裕基さんの狂言師野村家3代が共演。滑稽な所作とせりふ回しに息の合った掛け合いを披露して会場の笑いを誘い、万作さんの演技に大きな拍手が湧いた。「石橋」には、宝生さんが子獅子で出演。祝賀の意味を持つ演目として、紅白2匹の獅子が連れ立って現れて激しく舞踊する「連獅子」の特殊演出が取り入れられ、豪華絢爛(けんらん)な舞台で観客を魅了。小鼓の大倉さんは今回特別に、同市の黒川能(国指定重要無形民俗文化財)に500年ほど前から伝わるという鼓胴を使って出演し、鼓の音を響かせた。
本公演前には、旧庄内藩主酒井家第18代当主・酒井忠久さん、萬斎さんらによるシンポジウム、地元の子どもや大人20人が出演した連吟「鶴亀」も行われた。
この日は、本公演に先立ち酒井家初代・忠次公など祖先をまつる同市の荘内神社拝殿で祝賀能奉納があり、天下泰平、国土安穏、五穀豊穣(ほうじょう)を祈願して舞う「<翁(おきな)」が上演された。宝生さんが翁、萬斎さんが"三番叟(さんばそう)を務め、境内に集まった約120人を前に大鼓、小鼓、笛の音と調和した厳かで迫力ある舞を披露した。宝生さんは「鶴岡・庄内で縁のある三川家が築いた能楽の文化や素晴らしさを次代に伝えていきたい」、萬斎さんは「30年ほど前に黒川能を見物に訪れたことがある。今日は観客と一体となり、気持ち良く演じられた」と話した。観能した酒井忠久さんは「入部400年を契機に素晴らしい演目を奉納していただいた。先祖もきっと喜んでいます」と話していた。