2023年(令和5年) 3月14日(火)付紙面より
ツイート
鶴岡市立加茂水族館レストラン「魚匠ダイニング沖海月」で13日から、北前船の交易がもたらした食文化を基にした「ニシン蕎麦(そば)」の提供が始まった。須田剛史料理長(47)が北海道特産の硬い身欠きニシンを、時間をかけてふっくらと軟らかく調理し、越前名物「永平寺蕎麦」のそば粉を使った細いそうめんタイプのそばと合わせた。
近江商人(滋賀県)を介して越前(福井県)や京都に運ばれ、商品化された身欠きニシン。酒田から県内の内陸地方にも流通し、そば文化と融合した。北前船にまつわる料理を創作している須田さんは、文献に当たるなどしてそばとそうめんの歴史を研究し、新たなメニューを考案した。
永平寺そばと小麦粉を4対5程度の割合で混ぜ、鶴岡市内の製麺所から「限界に近い」(須田さん)という細いそばにしてもらい、軽く塩を入れてゆでた。最初はわずかに塩味が効いただしで、そのままニシンの深みのある味とそばを味わってもらい、コンブとカツオ節で香りが立つ別添えのタレを好みで加えて二度楽しんでもらう趣向。
大ぶりの身欠きニシン(半身)は1週間かけて水で戻し、丁寧に骨を抜いて煮るなど、箸で簡単にほぐれるほどふっくらと仕上げた。ニシンのしぐれご飯、文化庁の「100年フード」に認定された酒田名物のむきそばをセットにしてメニュー(税込み1500円)にした。
レストランでの提供を前に12日、関係者による試食会があり、須田さんの説明を聞きながら試食した人は「驚くほどニシンが軟らかく、そばと一緒に食べても食感が合い、うまい。返しのタレで別の味を楽しめる趣向もいい」と感想。須田さんは「北前船交易の夢とロマン、日本のそばとそうめんの歴史と文化に思いをはせて楽しんでもらいたい」と話していた。