2023年(令和5年) 2月8日(水)付紙面より
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鶴岡市西目の土砂崩れ災害から1カ月余。専門家の調査で崩落した斜面や周辺の地質はかなり風化が進んでいることが分かった。現地は国の「災害関連緊急地すべり対策事業」に採択され、ボーリング調査の結果を踏まえながら約11億円で、再発防止と今後崩落する可能性がある土砂の撤去や雨水の地下浸透防止策などを講じる予定だ。
一方、崩落現場について市の土砂災害避難地図(ハザードマップ)は、被災地を崖崩れ発生の危険性がある「警戒区域」の範囲と表示しているが、国土交通省の「目で見るハザードマップ」ではより危険度の高い「特別警戒区域」になっている。市は新年度、市全域のハザードマップを見直し、更新する。
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これまでのボーリング調査などの結果、地質の風化に加え、雨水の地下浸透で地盤が緩くなったことなどで崩落につながったとみられている。国の対策事業の範囲は幅約220メートル、高さ約30メートル。地下水を抜く横ボーリング工事によって穴を開け、集水管を挿入して排水するほか、不安定な土砂を撤去する。
災害では民家2棟を含む17棟が巻き込まれ、2人が犠牲になった。今も4世帯13人が市が用意した市営住宅などで避難生活をしている。避難指示解除がいつになるか不透明で、今までの生活環境から一変したことでの不便は尽きないだろう。また、避難指示を受けていない地域でも、「自分の家の辺りは大丈夫だろうか」と、土砂崩壊に不安を抱いている人もいる。
県内には昨年8月時点で、土砂災害防止法に基づく(1)土石流(2)地滑り(3)急傾斜地―の、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)が5176カ所、より危険度が高いという同特別警戒区域(レッドゾーン)が3510カ所ある。鶴岡市には警戒区域1015カ所、特別警戒区域が696カ所ある。ハザードマップでは双方を区別して表示するべきだが、同市が2015年に地区ごとに作成したハザードマップには「特別警戒区域」も「警戒区域」として表示されている。
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市のハザードマップには土砂災害警戒区域への注意事項として、「大雨時の十分な警戒」「警戒区域以外でも土砂災害が発生する可能性がある。日頃から周辺の状況を確認すること」などが載っている。住民にも災害から身を守るため、ハザードマップが意味するところを読み解き、周囲の変化に気付く力が求められる。そのためには、市がより分かりやすいハザードマップを住民に示さなければならない。
国交省の「目で見るハザードマップ」には、庄内にはレッドゾーンで示されている地域が多い。雪解けが進む3、4月は土砂災害が起こりやすい季節。行政のハード面での対策に頼る一方、そうした地域に住む人々は、自分の心の中に防災対策を築くことも要るのではないだろうか。