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2024年(令和6年) 4月11日(木)付紙面より

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考 急がれる公益大「公立化」

荘内日報主筆 橋本 政之

 「今年も200人前後が入学予定。子どもが少なくなる中で学校経営は厳しさが増している。皆さんのお陰で今は何とかやれるが…。最後は教育が人間を救うし、教育が人間を幸せにしてくれる。この地域が末永く発展するために、これからもよろしくお願いします」

 3月末、東北公益文科大学の新田嘉一理事長は、庄内地域を中心に官民各分野から選ばれている同大理事・評議員の合同会議で語りかけるように持論を交えて協力を願った。同月末で確定した今春の新入生は学部193人、大学院8人の計201人。一昨年度まで6年連続で学部定員(235人)を超えていたが、今春は昨春に続いて定員割れとなった。

 公益大は2001年に県と庄内14市町村(当時)による公設民営方式で開学した私立大学。今春までに合わせて3634人の卒業生を輩出した。昨春までの卒業生(3408人)の就職状況をみると、県内就職率(庄内と内陸の合計)は2017年度=50・8%、2018年度=51・2%、2019年度=39・9%、2020年度=41・2%、2021年度=36・2%、2022年度=38・5%といった推移。県内の若者人材育成の高等教育機関として確実に貢献している。

 公益大の理事長職は開学当初、歴代県副知事が担っていた。今年で満91歳を迎える新田理事長は、2009年の県知事選挙で現職を破り初当選した吉村美栄子知事(72)に乞われ、当時の副知事が辞任したため一時的に空席だった理事長職を引き受けた。しかし、副知事兼務の理事長が交代しても実質的な運営は当時の学長が中心で、定員割れが改善される兆しは見られず、新田氏は理事長辞任を吉村知事に願い出た。吉村知事に何度か翻意を促され続けることにしたが、同時に抜本的な大学改革を決意し、実権のある理事長として2012年度から取り組み始めた。

 富農の17代目に生まれながら安定した米づくりを捨てた新田理事長は、畜産・食肉加工販売「平田牧場」を興し一代で全国ブランドにした。その手腕には卓抜した予見能力も備わる。2017年春、公益大の入学式に来賓出席した吉村知事に「慢性的な定員割れからの脱却」という5年間の改革成果を報告。次の課題として「公立化の検討」を要請した。昨年そして今年のように、定員確保がいずれ困難になることを見越していたからだ。

 日本の18歳人口は団塊の世代がピークの1966年に249万人だったのが、2023年には109万人と半分以下に。今後の予測も一時的に増加する年はあるが、2034年には100万人程度と推計されている(文部科学省「学校基本調査」)。

 日本私立学校振興・共済事業団の私立大学・短大入学志願動向2023年度調査では、四年制私立大学の定員割れが初めて5割を超え320校になった。18歳人口は前年度比で2万4000人減少していた。特に状況が厳しいのは「地方にある小規模大学」という傾向も表れた。まさに当てはまるのが公益大だ。新田理事長は、将来にわたり学生を安定的に確保し大学経営を持続できるかという危機感を強め、安定的な経営基盤を確立するために早期の公立化を重ねて求めてきた。

 知事への要請から3年。「公益大の公立化と機能強化」が庄内開発協議会の2020年度重要事業要望に盛り込まれた。さらに2年後の2022年度から県と庄内2市3町との間で協議が始まった。県は昨年度、公益大の公立化・機能強化を検討するための予算を初めて計上。県と2市3町の事務レベル協議を重ねるとともに、前年に初めて行われた2市3町首長と副知事との意見交換を継続。公益大と同時期に「公設民営」で開学しすでに「公立化」された大学の視察などを進めてきた。

 本年度当初予算にも公立化・機能強化の検討が盛り込まれた。公立大学法人の設立に向け▽設立団体の考え方▽財政負担の在り方▽機能強化の方向性―などについて、県と庄内2市3町の間で早期に認識の共有を図り、その後に大学を加えて具体的な作業の本格化を目指すことにしている。他大学の事例では準備開始から公立化まで2年程度を要している。

 「認識の共有」には「庄内はひとつ」を基本に、庄内地域を持続可能にするための人材育成が公益大の存在意義であることを心していただきたい。県内4地区別に高等教育機関をみると、村山と置賜には早くから県立もしくは県主導の公立大学法人の高等教育機関が複数あり、今月8日には新庄市に県立東北農林専門職大学が開学した。こうした点からも公益大公立化は、県がさらに強く主導すべきだ。



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