2024年(令和6年) 4月17日(水)付紙面より
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鶴岡市小岩川で15日、住吉神社(本間直貴宮司)の例大祭が行われ、コロナ禍で中止が続いていた伝統の「神輿(みこし)押し」が5年ぶりに繰り広げられた。神輿を挟んで上手と下手に分かれた男衆が力を込めて押し合い、地域の豊作と豊漁を願った。
神功皇后(じんぐうこうごう)と海の神・住吉三神(表筒男命(うわつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、底筒男命(そこつつのおのみこと))の四柱を祭る同神社の神輿押しは、神社が創建された永観2(984)年から1040年余りにわたり、小岩川地区で受け継がれてきたとされる。上手と下手に分かれた男衆が12回押し合い、上が勝てば豊漁、下が勝てば豊作になると伝えられる。
この日の午前11時過ぎ、神社関係者と地区民による行列が神社を出発。神輿を担ぎ、旗とのぼりで飾り付けられた船型の山車「住吉丸」を引いて地区内を一巡した。2020年から4年間、例大祭は神事のみ行われており、行列がくねるのも5年ぶり。
海岸沿いの広場に到着し、午後1時過ぎに神輿押しを開始。ラクダ色のシャツともんぺ、黒帯、鉢巻きといった独特の衣装をまとった30人ほどの男衆が二手に分かれ、勇壮な押し合いを繰り広げた。にぎやかに太鼓やかねが打ち鳴らされる中、「ソーレ」の掛け声で男衆が力を込めると、押し合った状態からなかなか立ち上がれず、双方とも汗びっしょりになる姿に見物客からは大きな拍手と声援が湧き起こっていた。
行列の地元女性「舟唄」披露 北前船出発から上方までの様子を表す
神輿押しに先立ち地区内を一巡した行列には地元の女性10人が参加。道中、住吉丸を引きながら舟唄を披露した。舟唄の内容は北前船「住吉丸」が小岩川を出発し、当時の上方(大坂)に着くまでの様子を表したもの。
唄は一番につき4節で構成され、「住吉前から はせ出す船は よろずの宝を 山ほど積んで」「あやも積んだし 錦も積んだ 波に祈願を 掛けよと思う」など1節は7~8の語数と比較的短い歌詞だが、道中と浜で歌う番数は合わせて32曲に上る。覚え切れない人は英単語帳のように歌詞をメモしたつづりを手にして行列に臨む。
女人は紋付きの着物で着飾り、見物客や家族から「きれいだよ」「頑張って」と声が掛けられる。神輿押しと同様に昔から受け継がれてきた伝統の舟唄で、1年に1回の祭りのため練習を重ねているという。
行列に参加した本間廣子さん(77)は「長く続けてきた舟唄だが、紋付きの着物で行列に参加するのはもしかしたら今回が最後かも。小岩川も高齢化が進み、祭りに参加する人も年々減っている。着物の着付けが大変という声もある。祭りの後、今後どうするかみんなでよく話し合おうと思っている」と話していた。