2024年(令和6年) 4月16日(火)付紙面より
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ニジマスとサクラマスを人工的に交配させた養殖用の淡水魚「ニジサクラ」が鶴岡市高坂の青龍寺川へ不適切に放流された問題で、釣り人が在来種への食害を危惧している。生殖能力はなく雑交配の心配はないが、釣ったニジサクラの胃袋を開いたところウグイのような小魚が多く見つかった。釣り人は「ニジサクラは雑食性が強く大食い。外来生物として問題となっているブラックバスのようだ。青龍寺川や赤川に生息する在来種を脅かす危険性が高い」と指摘する。
今月5、6の両日、鶴岡市高坂と黄金の青龍寺川でニジサクラを計3匹(いずれも体長50センチ前後)釣った市内の男性(75)が胃袋を調べた結果、ザリガニ5匹と消化が進んだウグイとみられる小魚数匹が確認された。釣ったニジサクラのうち1匹は検査用サンプルとして赤川漁業協同組合に提出した。
例年通り3月1日からサクラマス釣りが解禁となったが、鶴岡市の男性釣り愛好者(55)は「酒田市の赤川河口で計10匹のニジサクラを釣った人もいる。私たち釣り人が一番心配するのは在来種への食害。7月に解禁されるアユの稚魚がニジサクラに食べられないかとても不安」と話す。
ニジサクラは県水産振興協会(鶴岡市)が昨年12月中旬、複数の買い取り業者からキャンセルがあった幼魚1000匹を安易に放した。当時は1匹500グラム程度だったが、4カ月近く経過し、いずれも1キロ以上に成長した。青龍寺川や赤川の小魚などを食べて成魚サイズになったものとみられる。
青龍寺川でニジサクラを釣った男性は「ウグイが目的なのに今年は全く釣れない。ニジサクラに食べられたのか、逃げ回っているのかは分からないが在来種へ与える影響は大きいと思う。生態すら分からない魚をなぜ放したのだろう」と問題視する。
県から指導を受けた水産振興協会では、鶴岡市や酒田市の釣具店などにニジサクラを釣った場合の対策を呼び掛けるチラシを配布した。依頼文面には「この度は放流すべきでないニジサクラを自然の川に放し、関係各位に多大なご迷惑をかけ深くおわび申し上げる」と謝罪。ニジサクラを釣った場合はリリース(再放流)せずに持ち帰るよう協力を求めている。
毎年、春のサクラマスと夏のアユ釣りを楽しみにしている釣り人は「人工的に作られた魚が自然界の生態系を壊す構図と同じ。私たち多くの釣り人は困惑というより憤慨している」と話している。