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2024年(令和6年) 5月11日(土)付紙面より

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一日一題 地方都市を消滅させない政治を

 民間の有識者による「人口戦略会議」は、以前の「東京一極集中問題」との呼称を、「ブラックホール現象」と言い換えた。ブラックホールは宇宙空間にあり、あらゆる物を吸い込んでしまう天体とされる。それに例え、東京への人口集中で地方都市の活力が奪われている現実を言い表した。

 人口戦略会議は、少子高齢化の加速で、全国の744市町村が「消滅可能性自治体」になるとの試算も示した。「消滅」と言っても“神隠し”のように消えてしまうわけではない。今のような行財政運営が難しくなり、住民サービスが困難になることを示唆している。

 総務省が公表した2023年10月1日時点の推計人口は、外国人を含めて約1億2435万人。日本人に限れば約1億2119万人、前年同月比83万7000人減った。この人数は庄内の総人口の3倍強に相当する。人口が増えた東京を除く、ほかの46道府県は減少している。東京一極集中を裏付け、東京は「人を吸い込むブラックホール」という事になる。

 消滅可能性自治体とは、20年から50年までの間、子どもを産む中心世代の20~39歳の女性が5割以上減少すると推計された自治体を指す。庄内では▽遊佐町65・8%▽庄内町60・4%▽酒田市55・9%▽鶴岡市51・1%―で5割超の減少。三川町は34・1%で、10年前に比べ若年女性の減少率が緩やかだった。しかし町の人口が減少傾向にあることに変わりはない。

 かつて、東京オリンピックを挟んだ高度経済成長期の頃「これからは東北の時代」と語られた。首都圏の活況を地方にも波及させるという意味合いだが、人口の首都圏流入は止まらなかった。中央省庁の地方移転構想の実現はごく一部に限られ、「地方創生」政策も功を奏していない。地方に活力をもたらそうという政府の本気度が足りなかったことが、消滅可能性自治体という危機につながったのではないか。

 地方に魅力がないわけではない。他県出身の地域おこし協力隊員が大勢活躍し、先頃の遊佐町の吹浦まつりで大阪出身の女性協力隊員が、同まつりで初めての女性楽師として活躍した。高校が地元企業の見学会を開いて庄内が持つ資源の潜在性を学び、地域を再発見しようとしている。新しい地域の担い手になることへの希望が持てる。

 生まれた土地に住み続けたいと思う人は多い。だが首都圏の大学に進学した後、地元で就職先が見つからないという現実もある。行政も手をこまねいているわけではなく、地域の活性化策を練っても、政策より人口減少のスピードが早いという悩みもある。「一将(東京)功成りて万骨(地方)枯る」のような日本であってはならない。地方にはそれなりの良さと魅力がある。行政と住民が一体になって持続を考えたい。

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