2009年(平成21年) 10月24日(土)付紙面より
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鶴岡市大網の七五三掛(しめかけ)地区の地滑り災害で22日、被災した家屋などを解体して亀裂や陥没部分を整地する地滑り対策工事が始まった。避難世帯の住民は「長く住んでいた家がなくなるのはまるで夢でも見ているようで、今でも信じられない」とため息を漏らした。
対策工事は農林水産省東北農政局と県庄内総合支庁が主体となり、降雪期を前に、被害が激しい住宅付近の陥没や亀裂部分を整地して地滑りを誘発する雪解け水の地下への浸透抑止を図るもの。建物は自主避難した家屋5棟を含む、公民館や作業小屋、車庫など計23棟を解体する予定で、今月9日に住民説明会を開き、所有者から20棟の解体について同意を得た。残りの3棟は承諾を得てから行う。
家屋などを解体した後は陥没部分約3000平方メートルを埋め立てるほか、住宅付近を中心とした約1万平方メートルの範囲にある亀裂個所に土を埋め込み、仮排水路を設置して地表から水が地下の地滑り面に浸透しないようにする。対策工事は東北農政局と県が分担し、11月下旬の完了を見込む。事業費は国と県を合わせて約3800万円。
作業開始となった22日は、工事を請け負った業者が避難世帯の住宅で、所有者が使用しなくなったタンスやストーブなど家財の搬出や窓など内装部分の解体を行った。家屋本体の解体は24日ごろになるという。
七五三掛地区の渡部弥一自治会長は「七五三掛に一生住むつもりで家を建てたが、予想もしなかった災害で失うのは非常に無念で残念。しかし、くよくよしていてもしょうがない。気持ちを切り替えて将来の生活を考えて頑張っていかなくては」と話した。
東北農政局七五三掛地区地すべり対策室の高橋寛室長は「慣れ親しんだ家が解体され、住民の方たちも非常に残念な思いをしている。地区の再生を願う住民の期待に応えられるように対策工事を進めていきたい」と話していた。
地滑り災害で被災した家屋の解体工事が始まった=22日