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2010年(平成22年) 3月11日(木)付紙面より

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庄内浜のあば 悲哀と快活と歴史と ―45―

助け合いは当たり前

数え番

 「少し足りねよだの」、「1匹取り換えるが」―。腰をかがめてヤリイカの箱詰め作業をしているお母さんたちの間から聞こえてきた会話だ。2月末の早朝、水揚げされたヤリイカの出荷作業が始まった酒田市飛島勝浦港では、お母さんたちが大忙しだ。

 定期船発着所の岸壁に敷かれたビニールシート上は、船から揚げられたヤリイカでいっぱい。“ヤリイカの
海”にも似た中で、お母さんたちが底の浅いかごに3キロずつ仕分け作業する。仕事は「数え番」と呼ばれ、イカの鮮度を落とさず素早く行わなければならない大事な役目。お母さんたちがヤリイカ漁を支えているのだ。

多めに計量

 大きさごとに分けて計量するが、ほとんどが3キロを少し超える程度と正確だ。規定より多めに箱詰めするのは、出荷途中でヤリイカが水を吐き出して軽くなるのを見越してのことという。長年の経験と勘が成せる技だ。

 ヤリイカは大きさごとに4ランクに分ける。一箱に入る匹数の目安は、1番10匹、2番15匹、3番20匹、4番21匹以上。勝浦の西村静子さん(68)の話によると、「1番という特別大ぶりなヤリイカはめったになく、15匹が主流のようだと思う。長く数え番をしていると、ひと目見れば何番かは見分けが付くものです」と話す。

 ヤリイカ漁にも好不漁の波がある。ひと朝に200箱以上も獲(と)れる大漁もあれば、10箱前後のこともある。西村さんは「大漁の日に当たった数え番は大忙しだ。その分張り合いはあっども、漁のない日は…。そごが、漁師の大変などごだなや」と話す。

分け隔てなく

 お母さんたちがヤリイカ漁を支えている、と書いたのには理由がある。勝浦の猪口網(ちょこあみ)漁は共同作業・経営で行われ、原則的として地区で漁業権を持つ全戸が「株主」となって運営している。鮮度を落とさない素早い箱詰め作業は人手が頼み。株主だけの手では足りないから、数え番には株主以外のお母さんたちも参加する。

 ヤリイカの猪口網漁が共同作業・経営で行われるのは、利益の一部を地区の行事費用に充てるため、皆が等しく働こうとの意味合いからだ。勝浦の伝統として受け継がれてきた決まり事だが、高齢化が進んで費用負担が重いと感じる人も増えている。共同作業の重要性は、この先ますます高まってくる。

 数え番の仕事が終わると、岸壁に傷んでいないヤリイカを5匹ずつに分けて並べた。数え番の“ご苦労代”として、株主もそうでない人も均等に分ける。これと別に、傷ついて出荷できないヤリイカも同じように分けて各自持ち帰る。

 勝浦には4つの組がある。朝7時、網上げを終えた船が戻ってくると、船倉の量を見て普通であれば2組、少なければ1組、大漁であれば4組全部に出てもらうよう有線放送が流れる。だからヤリイカ漁の時期、お母さんたちは毎朝気を抜けない日々が続く。

 高齢化が進む飛島では、人々の支え合いが何よりも大事だ。「助け合いは当たり前」と、西村さんは話す。

(論説委員・粕谷昭二)

素早くヤリイカを仕分ける主婦。飛島の漁業はこの人たちの力で支えられている(勝浦港で)(左) 長年の勘で、ひと目で大きさのランクが分かると話す西村さん
素早くヤリイカを仕分ける主婦。飛島の漁業はこの人たちの力で支えられている(勝浦港で)(左) 長年の勘で、ひと目で大きさのランクが分かると話す西村さん



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