2010年(平成22年) 3月18日(木)付紙面より
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酒田港など全国の重要港湾のうち、国は直轄公共事業の「選択と集中」の一環として、新規事業に着手する対象を「重点港湾(仮称)」として今年夏にも40港程度に絞り込む方針を示していることを受け、県と酒田市は県内唯一の重要港湾である酒田港の指定に向けて国に要望を活発化させている。今月8日には吉村美栄子知事が民主党本部と国土交通省を訪れ、酒田港の重要性を訴えた。
前原誠司国交相は昨年12月、公共事業費を削減する一方で港湾の国際競争力の確保に向け、全国に103港ある重要港湾の中から、拠点となる港湾を「重点港湾」として選び、新規の直轄港湾整備事業は重点港湾に限ることとする方針を示した。国から明確な基準は示されていないが、地域の拠点性や貨物取扱量、今後の発展性などの観点から絞り込みを行い、今年夏をめどに決定する見通し。
県空港港湾室によると、酒田港の港湾計画では北港地区で平成30年代前半までに高砂1号岸壁(5万5000トン)と宮海7号岸壁(2万トン)の整備が新規事業として計画されている。
また、国の直轄事業としては酒田港整備に毎年度20億円程度が配分されており、2010年度は本港・北港地区防波堤整備4―7億円、外港地区多目的国際ターミナル整備事業が2―3億円の予算の配分が見込まれている。
重点港湾に指定されれば国の予算が重点的に配分され、港湾整備に弾みがつくが、指定から漏れた場合は現在未着手の新規整備事業が国の直轄事業としてできなくなることが危惧(きぐ)される。さらに、継続されている事業への影響も懸念される。
県空港港湾室は「重点港湾から漏れた場合、国直轄による新規の港湾整備が滞ることが考えられる。日本海側の各港と酒田港の競争力という点でも影響は避けられない」と危機感を募らせる。ただ、現在進められている整備事業については「重点港湾の指定で、継続事業への予算措置などについて何も示されていない」とし、国の動向を測りかねている。
こうした状況を受け、県港湾協会長を務める吉村知事は今月8日、民主党本部で阿久津幸彦副幹事長、国交省で長安豊大臣政務官に面会。阿部寿一市長(酒田港湾振興会長)との連名で「県内唯一の重要港湾であり、拠点港として産業経済、地域活性化に果たしている役割が大きい。民間との協力による酒田港の振興にも努力している」などとした要望書を直接手渡した。この際、長安政務官は「取り組みを総合的に勘案して選定したい。酒田港の優位性をアピールしてほしい」と述べたという。
県空港港湾室は指定に向けて「地方でできる整備は限られており、今後の酒田港の発展に大きな影響が出る。国の動きなど情報収集に努め、さらに重要性を強く訴えていきたい」と話している。