2012年(平成24年) 4月25日(水)付紙面より
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今年が「たつ歳御縁年」に当たる鶴岡市下川の善寳寺(五十嵐卓三住職)が所蔵する文化財などを紹介する企画展「善寳寺の歴史と祈り」が24日、同市の致道博物館で始まった。国の重要文化財「王昭君図」をはじめ、江戸期の歴代住職らがしたためた「龍」の字の書作などが展示され、1200年を誇る寺の歴史や信仰、文化的な側面などを知る貴重な展示会となっている。
善寳寺は、「法華験記」や「今昔物語」に登場する妙達上人が草庵を結んで「龍華寺」としたのが始まりとされる。室町時代に曹洞宗の大年浄椿(だいねんじょうちん)禅師が寺屋を建立。山号を龍澤山、寺号を善寳寺と改めた。江戸末期に北回り航路の発展とともに、「龍神様の寺」として信仰が広まり、北海道や東北、北陸をはじめ多くの信者を有している。
今年の「たつ歳御縁年」を記念し、あらためて寺の歴史をひもとき、全国の信者から寄進された絵画や歴代住職の書など貴重な文化財や門外不出の寺宝を紹介しようと企画。同博物館で同寺の所蔵品を公開するのは1985(昭和60)年の「寺宝展」以来。
今回は、書や絵画、仏像など36点を展示。善寳寺所有の名画として名高い明治時代の日本画家・菱田春草作の「王昭君図」は、1904(明治37)年に函館の漁業経営者から寄進されたもの。中国漢の美女・王昭君を匈奴(きょうど)の王に送る別れの場面を描いた大作が目を引く。
また、歴代住職に関して現存する一番古い史料となる江戸時代前期の11世徳翁俊學(とくおうしゅんがく)和尚の「寺領復活嘆願書」、寺門の興隆に尽力した江戸期中興の26世大雲祥嶽(だいうんしょうがく)和尚や明治期に五重塔建立を発願した33世月圓禪山(げつえんぜんざん)和尚らがそれぞれ残した「龍字」などがある。
初日に会場を訪れた42世・五十嵐住職は「曹洞宗の寺としての歴史や信仰の広がり、寄進された貴重な文化財など見どころがある。多くの方に足を運んでもらえたら」と話していた。展示は5月21日まで。