2016年(平成28年) 7月2日(土)付紙面より
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庄内がメーンロケ地の松竹映画「殿、利息でござる」の原作「無私の日本人」(文藝春秋刊)の著者で、国際日本文化研究センター准教授の磯田道史さんを招いた講演会が30日、酒田市の東北公益文科大学公益ホールで開かれ、磯田さんは「無私は私がないわけでない。自分と他人の垣根がない、日本人の美徳」と述べた。
この講演会は、公益大後援会(上野隆一会長)が本年度総会に合わせて企画したもの。講師の磯田さんは1970年、岡山市生まれ。2002年に慶應義塾大大学院文学研究科博士課程を修了した。史料を読み込み、社会経済史的な知見を生かして歴史上の人物の精神を再現する仕事を続けている。今年4月から現職。主な著書に「近世大名家臣団の社会構造」(文春学藝ライブラリー)、第63回日本エッセイスト・クラブ賞を受けた「天災から日本史を読みなおす」(中公新書)など。NHK・BSプレミアムで放送している「英雄たちの選択」などに出演中。史学博士。
磯田さんはこの日、「公益をみつめる大切さ―無私の日本人」と題し講演。冒頭、庄内地方に関し「米のおいしい所に悪い人はいない。自分の田舎は悪い人ばかり」と語って会場を沸かせた。そして「江戸期の三大飢饉(ききん)の際、庄内の豪商は『自分が助けなければ東北の人たちが死んでしまう』と、飢えのため他の藩から来た人たちに食料などを提供した。給食の起こりもそう。庄内のきちんとした思想は東北中の手本になっていた。庄内のこの精神は必ず世界で評価される」と語った。
また、「殿、利息でござる」、自著「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」(新潮新書刊)を基にした松竹映画「武士の家計簿」の撮影エピソードも紹介。集まった650人もの聴衆はユーモアを交えながらの磯田さんの語り口に引き込まれ、熱心に聴講していた。