2019年(令和1年) 7月30日(火)付紙面より
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水上に組んだ野外の能舞台が、かがり火とライトに照らされ、水面に映し出される「水焔(すいえん)の能」が27日午後6時から、鶴岡市櫛引総合運動公園の特設ステージで行われた。国指定重要無形民俗文化財・黒川能の恒例行事となっており、今回36回目。県外からの観覧ツアーなど、約300人が幻想的な舞台を楽しんだ。
今回、感慨ひとしおの思いで見入っていたのが大阪大名誉教授の渡曾仁さん(72)。理学博士で分析化学の研究者だ。大阪府豊中市在住で、旧櫛引地区の出身者で構成される関西櫛引会の一員としてツアーに参加した。
櫛引地区でも下山添茶屋川原出身。能を行う黒川とは別地域で育ち、中学時代に2月の当夜(王祇祭)を見物して以来、約60年ぶりの観覧だったというが「何も知らなかった中学時代とは違っていた。まさしく本当の文化だ。古い言い回しを何百年も、しっかり引き継いで再現できる。子どもたちも、学び参加している。これらを維持してきたコミュニティーの素晴らしさを感じた」と称えた。大学教員として海外で数多くの見聞を持ったが「バリ島の土着舞踊も素晴らしかったが黒川能はビジネスのにおいがほとんどしない分、バリより素晴らしいとも思った」とさらに称賛した。
今回、県外の3櫛引会との合同ツアーが計画され、11人が参加した。首都圏櫛引会の佐藤榮作会長(71)は「まさしく故郷再発見のツアーになった。3つのうち宮城櫛引会の皆さんが都合で全く参加できなかったのは残念だったが、また企画したい」と語っていた。
水焔の能では27年ぶりに披露された1時間20分の大曲「道成寺(どうじょうじ)」をクライマックスに、地元・櫛引東小学校児童による舞囃子(ばやし)「高砂」と狂言「蟹山伏」がこの日上演された。