2020年(令和2年) 2月5日(水)付紙面より
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江戸期から明治期にかけ遠隔地交易の主役だった北前船の寄港地関係者らが交流を深める「第29回北前船寄港地フォーラムin鹿児島」が2日、鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開かれ、西郷南洲翁の縁で交流を深める酒田市の丸山至市長、鹿児島市と兄弟都市盟約を結ぶ鶴岡市の山口朗副市長と本間新兵衛議長ら庄内地域からの訪問団計30人を含め約800人が参加。九州地方では初の開催で、パネル討議や基調講演などを通じ、明治維新で北前船が果たした役割について理解を深めるとともに、地方間の交流促進の可能性をあらためて考察した。
フォーラムは、作家で酒田市美術館長の石川好さんが提唱した「北前船コリドール構想」に基づき2007年11月、新田嘉一平田牧場グループ会長(北前船寄港地フォーラム名誉会長)が中心になって酒田市で第1回を開き、規模を拡大しながら全国の寄港地などで随時開催している。一昨年8月にはJR東日本、ANA総合研究所、平田牧場グループなどが「北前船交流拡大機構」(浜田健一郎理事長)を設立し、地域間交流の促進で地域活性化を図る体制を強化している。
今回のテーマは「明治維新の力・北前船で広がる交流の輪―令和の新たな輪は海を越えて」。かつて財政が厳しかった旧薩摩藩(鹿児島)は、蝦夷(北海道)から北前船で運ばれてきた昆布を入手、琉球(沖縄)を経て中国に輸出する「昆布ロード」を確立。これを基に財政を立ち直し、明治維新につなげたとされる。
今回のフォーラムは鹿児島市と鹿児島県町村会、鹿児島観光コンベンション協会などが実行委員会を組織し企画。当初は大連市を中心とした中国の参加が予定されていたが、新型肺炎の影響で見送りになった。
2部構成で行われ、第1部は「北前船と鹿児島」をテーマに市民らを対象にしたパネル討議。コーディネーターを務めた志學館大学(鹿児島市)の原口泉教授(日本近世史・近代史)は、フォーラムの礎を築き、今なお地域間の交流拡大に向け尽力する新田会長について触れ、「『本間様には及びもせぬが、せめてなりたや殿様に』と歌われる本間様が付いていた旧庄内藩は強かった。新田会長は現在の本間様。交流のさらなる拡大、地域の活性化を見据えている」とその功績をたたえた。第2部で同市の森博幸市長は「北前船なくしては明治維新、ひいては日本の近代化は成し得なかったかもしれない。九州初のフォーラムを鹿児島で開催する意義は深く、光栄」と主催者あいさつ。以前に酒田市の東北公益文科大学公益ホールでも講演したことがある歴史学者の磯田道史さんが「なぜ薩摩は強い国か」のテーマで基調講演し、「何かが起きる前に答えを見いだしておく」というより実利的な教育「郷中教育」を受けていた影響が強いと指摘した。
同日夜のレセプションでは、「地域の発展、国土の繁栄、世界平和は互いに認め合い、学び合うことから始まる。回を重ねてきた北前船寄港地フォーラムは名実ともに日本を代表するフォーラムに発展したが、目的はここにある。フォーラムが新たな段階に入ることを期待する」という新田会長のメッセージが読み上げられたほか、鶴岡・酒田の訪問団は「最上川舟唄」を披露、全国各地から集まった参加者の喝采を浴びた。
翌3日午前は鹿児島県内を巡るエクスカーション。フォーラム前日の1日夜には前夜祭も行われ、「寄港地」を縁に全国各地から集まった関係者が交流を深めた。30回の節目に当たる次回は3月14日(土)、島根県浜田市で開催される。
2020年(令和2年) 2月5日(水)付紙面より
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酒田の今年1月の月平均気温が1937(昭和12)年の観測史上最高となったことが、3日公表された気象庁の観測データで分かった。暖冬がデータから裏付けられた形で、降雪も記録的に少なかった。
酒田の1月の月平均気温は4・2度で、平年値(1981―2010年の30年平均)の1・7度と比べ2・5度高くなった。過去最高だった2007年の4・0度を上回った。1月の累積降雪量は5センチ(平年値122センチ)と極端に少なかった。気象庁によると、今冬の高温・少雪は偏西風が北に蛇行したため本州付近に寒気が南下せず、冬型の気圧配置が続かないことが原因で、2月も暖冬傾向が続く見込みとなっている。