2020年(令和2年) 6月12日(金)付紙面より
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夢の甲子園でプレーができる―。日本高校野球連盟は10日、新型コロナウイルスの影響で中止した今春の第92回選抜高校野球大会に出場が決まっていた鶴岡東など32校の救済策として、8月に甲子園球場(兵庫県西宮市)で「甲子園高校野球交流試合」(仮称)を開催すると発表した。32校が、1試合ずつ計16試合を行う。対戦カードは7月18日に各校主将によるオンライン抽選会で決定する。「春のセンバツ」の夢舞台をいったんは断たれた鶴東ナインに“夏の招待状”が届いた。
発表を受け鶴岡東高野球部の佐藤俊監督(48)と鈴木喬主将(3年)は、この日午後4時半から鶴岡市高坂の野球部グラウンドで報道陣の取材に応じた。“吉報”を知らずにいた鈴木主将に、佐藤監督が自身のスマートフォンを見せながら「8月に甲子園で試合できるぞ」と伝えた。最初は何のことか分からず戸惑った表情の鈴木主将も、状況を理解してようやく笑顔に。「キャプテンの笑顔を久しぶりに見ました」。佐藤監督の表情も緩んだ。
鈴木主将は「センバツや夏の甲子園が中止となり一時は本当に苦しかった」と振り返り、甲子園でのプレーに向け、「甲子園は小さい頃からの夢。モチベーションも上がる。3年間練習で積み重ねてきた成果を甲子園で出したい」と意気込んだ。グラウンドで報告を受けた99人の野球部員たちにも笑顔が広がった。3年生35人にとっては諦めていた甲子園の夢舞台。昨夏の甲子園を経験した山路将太郎選手(3年)は「目標を失いかけていた。1試合だけでも甲子園で今の仲間と試合できるのは人生の財産になる」と喜んだ。
佐藤監督は「センバツ中止で3年生は時計が止まってしまっていた。『苦しんでいるのは君たちだけじゃない』と伝えてきた。そうした中で与えられたチャンス。選手たちからは謙虚な気持ちを忘れないでほしい。しっかり仕上げて、甲子園でいい戦いを見せたい」と話した。鈴木主将は「親に甲子園で試合ができることをすぐに知らせたい。喜んでもらえるはずだから」とうれしそうな表情を浮かべた後、「負けて甲子園に行くわけにはいかない。7月からの県高校野球大会は負けられない」と気を引き締めた。
甲子園交流試合は8月10―12日と15―17日の計6日間。感染防止の観点から1日3試合以内とし、延長戦は行わない。現時点では無観客とするが、控え部員、保護者の観戦については、今後の感染状況を見ながら検討する。ベンチ入りは春夏の甲子園大会の18人から20人に拡大して3年生の出場機会を増やす。
2020年(令和2年) 6月12日(金)付紙面より
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日本海を回遊するスルメイカを追う中型イカ釣り船が11日午前、相次いで酒田市の酒田港を出航した。これまで市、県漁業協同組合主催の出航式が盛大に行われてきたが、新型コロナウイルス感染症のため今年は中止。袖岡埠頭(ふとう)に集まった家族、関係者は乗組員たちの航海の安全と大漁への願いを込め、送り出した。
150トン前後の中型船で船団を組み、6月初旬から翌年2月ごろまで日本海中央部の大和堆を中心に島根県沖からオホーツク海まで操業し、「船凍イカ」にして水揚げする。本県関係の船は、北海道から石川県までの十数隻で「山形県船友漁撈長会」(山形船団)を結成し、全国トップクラスの水揚げを誇っている。漁撈長の大半が酒田市飛島を中心にした庄内出身者。
山形船団を構成する第38正徳丸の佐藤長悦郎漁撈長(70)=鶴岡市小波渡=によると、今月9日に1隻が出航済み。この日はあいにくの雨降りの中、大漁旗で彩ったイカ釣り船5隻が袖岡埠頭に集結し午前9時ごろから飲食物などの積み込み作業が行われ、正午ごろまでに順次、出航した。
佐藤漁撈長によると、感染症の影響で、毎年乗り込んでいるインドネシアからの漁業実習生が来日できず、人手不足が顕著という。さらに好漁場として知られる大和堆での外国漁船の違法操業、感染症に伴う魚価の低迷と不安は尽きない。
佐藤漁撈長は「水産庁によると、今のところ、大和堆に外国漁船は入っていないという。これからどうなるか…。期待と不安でいっぱいだが、安全操業で頑張って捕るだけ」と話し、船に乗り込んだ。酒田港への最初の水揚げは来月20日前後になるという。